「どのデザインも似たり寄ったりで面白くない」
「弊社はもっと革新的で斬新なデザインで他社と差別化したい」
そういう意見も少なくはない。
どのレベルを似ているというのかという議論は置いておいて、確かに似たり寄ったりなデザインは少なくない。ただ一方でそれはユーザーファーストを前提に考えると正解でもある。
Webサイトというのは芸術ではない。あくまでも機能的なものである。機能的なものであるわりに説明書はないし、もちろんあったとしても見る人はいない。つまり、初めて訪れたユーザーでもサクサクと使えるような“馴染みのあるもの”が評価されることが多い。
ボタンの配置、メニューの配置、行間や余白のとり方、これらはデザインに大きな影響を与える要素であるが、それらは、ボタンをクリックしてもらうための“機能”、文章を読んでもらうための“機能”、全体の構造を認識してもらうための“機能”である。
Webサイトとしてユーザーが使いやすい機能を提供することは当然である。Webサイトで使い勝手を重視するのであれば、デザインがある程度似てくるのは致し方のないことというのは一理ある。
燃費の良いクルマをデザインしようと思ったら、ほとんどクルマがプリウスのようになるという話を聞いたことがある。特定のことに特化すればするほど同じようなものになりやすいのは当然の原理なのかもしれない。
しかしそれがゆえ、「どのデザインも似たり寄ったりで面白くない」という意見が出てくるのである。
本記事で理解いただきたい内容の1つが、デザインで差別化を…ということに固執し過ぎて、奇抜なデザインを採用し、使い勝手が悪くなり失敗に終わるケースもあるということだ。
しかし、このあたりはクライアントとしてはジレンマだ。他とは差別化したいのだが、やり過ぎると逆にユーザーは離れていってしまう。デザインで差別化をしながらもユーザーにとって使い勝手の良いWebサイト作らなければならない。
ではどのようにしたらよいのだろうか。
以降、本記事ではいかにデザインで差別化をしながら使い勝手の良いWebサイトをデザインするかについて、そのポイントをあげる。
デザインの差別化と使いやすさを共存させるためのポイントとなるのが、使い勝手の要となる部分を最低限担保しておくという考え方である。
つまりUI(ユーザーインターフェース:使い勝手)設計におけるポイントを予め明確にしておき、あとは自由にデザインをしていこうという考え方だ。
例えば、全体のレイアウトやメニューの配置などは、ユーザーの違和感がないようなデザインと配置を心がけ、あまり込み入ったことはしない。もしテレビのリモコンのデザインが奇抜なものであったら、だれもそのテレビを積極的に見ようとしないだろう。だからテレビのデザインは細部にこだわってもリモコンはUIを優先させようということだ。
資料ダウンロードボタンやお問い合わせフォームのような重要機能についても、わかりやすさを優先し、どこが押せるのか、どこが入力できるのか、などユーザーがアクションを起こす上で迷いがないようなデザインを重視する。
行間やフォントサイズ、フォントカラー、段落ごとの余白は最低限の見やすさを担保する。
つまり機能として、操作できること、読み取れること、この2つを最低限のレベルをクリアするUI設計をしよう。一旦このあたりを念頭に入れたら、あとは自由にデザインをしてみる。様々なWebサイトを参考にしながら、面白いアイデアをどんどん取り入れていくのもよいだろう。
そうすると大抵、気づいたら全体のまとまり感が欠落してくるので、デザインの終盤に無駄を削ぎ落としていく。そうすると面白いアイデアを取り入れながらも使い勝手の良いデザイン案ができる。
注意しておきたいが、大切なのは面白いアイデアを入れることではなく、あなたの会社の世界観を見事に表現するための面白いアイデアだ。面白いアイデアも時には無駄な粗大ゴミのようになり兼ねない。
せっかくあなたのWebサイトに訪れてきてくれたユーザーを逃さないよう、綿密なUI設計をした上でデザインを差別化しよう。