ホームページ制作の現場では、表からは見えづらい工夫や調整が行われています。打ち合わせ、設計、デザイン、コーディング、どの工程にも、より良いものをつくるための努力があります。
今回ご紹介するのは、制作会社が日々取り組んでいる“裏側のストーリー”です。「大変なんです」ということを伝えたいのではなく、制作過程で起こる様々な課題や苦労する点を知っていただくことで、今後のコミュニケーションをよりスムーズにするヒントとなればと考えています。
とりあえず見積もりだけ欲しいのかな、と感じてしまう依頼があるのも事実です。
見積もりや提案をするためには、必要な情報が様々あるのですが、制作会社の情報提供依頼に対してあまりにも消極的であったり、簡素過ぎる内容しか返ってこない場合、どこまで本気で制作依頼の検討をしているのか考えてしまうことがあります。
見積もりを出しても返事がなかったり、打ち合わせを重ねた上で提案まで進んだのにもかかわらず、その後連絡がなかったりするケースもあるので、初期段階であまり真剣さを感じない場合は、どこまで提案に時間を使うか正直迷ってしまいます。
真剣に制作を検討しているのであれば、ファーストコンタクトからそれが伝わるようにした方が、双方にとって良い結果になると思います。見積もりや提案作業は意外と多くの時間を要するので、やはり本気度を感じる依頼の方が、制作会社としても自然と力が入るものです。
ホームページ制作において情報はとても大切なものであり、クライアントから提供された情報や制作会社が調査した情報をもとにコンテンツやデザイン、機能などが検討されます。
ただクライアントにヒアリングをしてもすべて担当者の感覚ベースで回答をもらうこともたまにあります。この場合、2つの問題があります。
1つは、会社の方針や実際のデータとは異なる前提で検討が進んでしまうことです。これは、本来の制作目的からそれた成果が出来上がる可能性があります。
2つ目は、制作途中の社内レビューで大きな方針転換が入り、大幅な出戻りが発生してしまうことです。制作会社に大きな負担が発生するため追加見積もりや納期延長の可能性が高くなります。
発注後の仕様追加は基本的には追加見積もりになるケースが多いですが、中には仕様1つ変えることで広範に影響するものもあり、少しの仕様変更・追加の予定が雪だるま式に増えていくことがあります。一般的なホームページ制作では、そこまで大きな影響が出るケースは多くないかもしれませんが、ECサイトやシステム開発になってくると、データの仕様変更が大規模な仕様変更になることがあるので、最初にしっかりと制作会社と相談しておくことが重要ですし、逆に制作会社もしっかりフォローする必要がある点になります。
開発の途中で「やっぱりこういう感じにして欲しい」「この機能が欲しい」と言われることもあります。基本的には追加見積もりになるものの、ライトな内容の場合はサービスで追加することも少なくありません。ただ無償で追加した内容から(悪意はなくとも)どんどんその仕様が拡大されていくことがあり、制作会社としてはサービスでやると言った手前、立場的には辛くなるケースがあります。
もちろん許容値を明らかにオーバーしてしまっている場合は相談しますが、個人的には追加見積もりは最低限に留めたい思いがあります。やはりクライアント側からすれば制作に慣れていない分、進行中に気づくことや考え直すことも多少あるのは普通だと思いますので、ライトな内容であればできるだけ拾っていきたいというのが個人的な想いではあります。
デザインフィックス間近になって社長や役員などの重要人物から大きな指摘が入ることがあります。それまでにステップを踏んで双方で確認してきたはずの内容がひっくり返るような事態となれば、その修正コストを誰が持つのかという議論にもなります。
担当者からの「社内で話を通していたはずなのに今になってうちの◯社長が…」というような言葉は過去に何度か聞いたことがありますが、なかなか辛い状況になります。
開発フェーズでは外部サービスを使うことも全く珍しいことではありません。ただ外部サービスを使うということはそのサービスに仕様変更があった場合に対応しなければならないということでもあります。サービスの仕様変更でやろうと思っていたことができなくなり代替案を考えなければならないことや、開発方法の変更を余儀なくされることが稀にあります。これは誰のせいでもないので粛々と対応することになります。
ようやく開発完了し公開は目前、ただここからすんなりとはいかないケースもあります。公開前の関係者レビューで、突然追加要望が出ることがあります。明らかな追加要望であれば納期に関する相談は必要に応じてしますが、できればこの時点でリリース日をずらしたくないのがお互いの考えだと思います。基本的にギリギリの納期を設定しないようにしているため大方は吸収できますが、それでもリリース直前にハードモードになることはあります。
公開後にテキストなどを見直していてちょっとした表現の変更などが入ることはよくあります。弊社も公開後の一定期間はそういったテキスト変更は無償で対応していますが、中には追加見積もりが必要な比較的大きめの修正が公開後に出てくる場合があります。
聞いてみると公開後に初めて新しいホームページを見た他部署からの指摘だったりするのですが、気持ちよく公開したあとに追加見積もりもあまりしたくないので、その意味では何とも言えない気持ちになります。
制作会社からすれば慣れたホームページ制作でも、クライアントの担当者からすれば初めてのケースも多いです。そのため、お互いにスムーズな進行を心がけていてもやはりある一定の出戻り等による負荷はあると思います。
ただ大きな出戻りはお互いに工数や納期に対して問題を抱えることに繋がりかねません。制作会社は納期・コストを念頭に適切な進行を、依頼主は必要な社内調整を怠らないことが、スムーズなホームページ制作へと導くと思います。