はじめに
ホームページの制作やリニューアルを検討し始めると、まず「コーポレートサイト」「ランディングページ(LP)」「ECサイト」といった種類で整理することが多いと思います。
見積もりを取る際も、「コーポレートサイトを作りたい」という形で話が始まるケースは珍しくありません。
ただ、同じコーポレートサイトであっても、何を優先するかによって、必要な設計・依頼内容・費用感は大きく変わります。種類はあくまで形の話であり、何のために作るのかは別の話です。
この記事では、HP制作を依頼する前に整理しておきたい「サイトの目的」という考え方と、判断の際に確認しておくべきポイントを解説します。
なぜ「種類」だけでは判断できないのか
Webサイトの種類でよく見かける分類は、次のようなものです。
- コーポレートサイト
- サービス紹介サイト
- ランディングページ(LP)
- ECサイト
- 採用サイト
これらはサイトの構造や性質のイメージを伝えるうえでは有効です。しかし、制作の判断材料としては不十分なことがあります。
たとえばコーポレートサイト一つを取っても、次のように目的はさまざまです。
- 会社のことを正しく知ってもらいたい(情報伝達)
- 信頼感を持ってもらいたい(信頼構築)
- 問い合わせを増やしたい(顧客獲得)
いずれも「コーポレートサイト」という形ですが、重視すべき設計は異なります。目的を決めずに種類だけで発注すると、見た目は整っても、期待する成果につながらないことがあります。
制作会社に相談する前に、「どんな形のサイトか」よりも「何を実現したいか」を先に整理しておくと、見積もりの比較や依頼内容のすり合わせがしやすくなります。
サイトは「目的」で分けると整理しやすい
サイトを「種類」ではなく「目的」で分けると、依頼内容の整理がしやすくなります。大きく分けると、次の4つに整理できます。
| 型 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| プロモーション型 | 興味・関心を持ってもらう | イベントやキャンペーンなど幅広めで入口として興味を持ってもらうサイト |
| 情報伝達型 | 正しく理解してもらう | 大学や自治体などたくさんの情報をわかりやすく見せたいサイト |
| 信頼構築型 | 信頼・安心感を醸成する | 顧客やターゲットが見たときに信頼を得られるのか、ブランドとマッチした世界観が再現できているかなど、一般的に多くのコーポレートサイトに求められる |
| 顧客獲得型 | 問い合わせ・購入などの成果を得る | お問い合わせや購入など成果主義的なサイト |
1つのサイトが複数の目的を持つことは珍しくない
たとえばコーポレートサイトは、次のように複数の目的を兼ねることが多いです。
- 会社の情報を伝える(情報伝達型)
- 信頼感を醸成する(信頼構築型)
- 問い合わせにつなげる(顧客獲得型)
問題なのは、目的を複数持つこと自体ではなく、どれを主目的とするかが決まっていないことです。全部を同じ優先度で進めようとすると、設計がブレやすくなります。
依頼前に「このサイトの主目的は何か」を1つ決めておくことが、制作の出発点になります。
目的ごとに必要なことは違う
HP制作を検討する際、制作会社の技術(使用するCMSやフレームワークなど)だけでは判断しきれないことがあります。目的によって重視すべき設計や運用の力は異なるからです。
| 重視される力 | プロモーション | 情報伝達 | 信頼構築 | 顧客獲得 |
|---|---|---|---|---|
| ブランド・世界観設計 | ◎ | △ | ◎ | ○ |
| 情報設計・ライティング | △ | ◎ | ○ | ○ |
| 信頼の可視化(実績・事例) | △ | △ | ◎ | ○ |
| CTA・コンバージョン設計 | △ | △ | △ | ◎ |
| 計測・改善(PDCA) | ○ | △ | △ | ◎ |
| 広告・集客 | ◎ | △ | △ | ○ |
| コンテンツ継続更新 | △ | ○ | ○ | △ |
◎=特に重要 ○=重要 △=比較的補助的
※ ビジネスの現在地点や訴求したい内容など個別具体的な検討が必要なため、あくまでも参考としてください。
目的別のポイント
プロモーション型では、認知や話題化が目的です。ビジュアルや世界観の設計、広告やSNSとの連携が重要になります。サイト単体で完結するケースは少なく、施策全体の中での役割を考える必要があります。
情報伝達型では、情報の整理と読みやすさが中心です。ナビゲーション設計、ライティング、更新のしやすさが重要になります。自治体や学校、病院など、幅広いユーザーが利用するサイトでは、アクセシビリティへの配慮も求められます。
信頼構築型では、実績・資格・事例・沿革など、信頼の根拠をいかに見せるかが重要です。デザインの品質や情報の正確さが、そのまま信頼感につながります。
顧客獲得型では、問い合わせ・購入・応募・予約など、具体的な行動につなげる設計が中心です。CTA(行動喚起)の配置、フォームの設計、計測の仕組み、公開後の改善まで含めて考える必要があります。
主目的が「問い合わせを増やすこと」であれば、デザインの美しさだけでなく、導線設計・計測・改善の話がセットで必要になる、という点は押さえておきたいところです。
制作依頼前に決めておくべきこと
HP制作を依頼する前に、社内で次の5点を整理しておくと、その後の進行がスムーズになります。
1. 主目的は何か
認知、理解、信頼、成果の獲得——どれを最優先にするのかを決めます。
2. 誰に向けたサイトか
既存顧客、新規の見込み客、採用候補者、取引先など、メインのターゲットを明確にします。
3. 成果の定義
「問い合わせが月5件以上」「採用応募が増える」「資料請求が取れる」など、成功の基準を具体的にします。ただ成果の定義は現実的なライン引きも重要ですので、これも制作会社と相談すべきポイントの1つです。
4. 公開後どうするか
更新の頻度、担当者、改善を続けるかどうかを決めます。制作だけで終わるのか、運用まで含めるのかもここで整理します。
5. 予算の内訳
制作費だけか、運用・改善・集客の費用も含めるのかを決めます。
よくある勘違い
- とりあえず作れば何とかなる
→ 目的がないと設計がブレます。 - リニューアルすれば問い合わせが増える
→ 導線や計測の設計がなければ、見た目だけ変わって成果が変わらないこともあります。 - 制作費にどこまで含まれるのか
→ ライティング、撮影、データ移行など、どこまでが制作費として見積もりに含まれているのか提示されていない場合は確認が必要です。そうでなければ、後で「ライティングしてもらえると思っていた」「素材費用も含んでいると思っていた」など食い違いが起こる可能性があります。
「運用」と聞いたときに確認すべきこと
制作会社の提案に「運用」が含まれることはありますが、その内容は会社によって大きく異なります。「運用」という言葉だけでは、何が提供されるのか判断できないため、具体的に確認することが重要です。
運用の種類
| 種類 | 内容 | 期待できること |
|---|---|---|
| 保守 | システムのバージョンメンテンナス | セキュリティを高く保つ |
| 更新 | テキスト・画像の差し替え、軽微な修正 | 情報が古くならない |
| 計測・レポート | アクセス数、問い合わせ数の定期報告 | 現状が数字で把握できる |
| 改善 | CTA・フォーム・導線の修正 | 成果率の向上 |
| 集客(SEO) | 記事投稿、キーワード対策の継続 | アクセス数の増加 |
| 広告運用 | リスティング広告、SNS広告など | 即効性のある流入 |
確認しておきたい論点
アクセス数が少ないサイトでは、改善施策の効果が見えにくい場合があります。アクセスそのものを増やすには、SEOによる記事投稿や広告など、別の施策が必要になることが多いです。
「運用をお願いする」と言ったときに、自分が期待している内容と、制作会社が提供する内容が一致しているかを確認しておく必要があります。
制作会社への確認質問例
- 月次レポートには何が含まれますか?
- 記事の更新や新規作成は含まれますか?
- 広告運用は含まれますか?
- フォームやCTAの改善は含まれますか?
- 更新に使う原稿や素材は誰が用意しますか?
制作会社選びで見るべきポイント
制作会社を比較検討する際、次の5点を観点にすると判断しやすくなります。
1. 主目的に合った実績あるいは提案があるか
制作するサイトの主目的に近い事例があるか、あるいは提案が主目的に沿っているかを確認します。実績としてデザイン力は目に見えやすいですが、目的に沿ったWebサイトの提案になっているかまで確認する必要があります。
2. 制作後のスコープが明確か
納品で終わりなのか、計測の設定や改善まで含むのか。制作費用に何が含まれ、何が含まれないのかが明確かを確認します。
3. やらないことがはっきりしているか
広告運用、記事の継続作成、撮影など、対応範囲外のことを明示している会社は、発注後のミスマッチが起きにくい傾向があります。
4. 運用の期待値が合うか
自社が求める運用(更新のみ、改善まで、集客までなど)と、制作会社が提供する運用の範囲が一致しているかを確認します。
まとめ
HP制作は「作ること」自体がゴールではなく、事業の目的を実現するための手段です。依頼前に目的と範囲を整理しておくだけで、制作会社とのすり合わせは大きく変わります。
複数の制作会社に見積もりを依頼する場合も、同じ前提(目的・成果の定義・運用の範囲)で話を進めると、比較がしやすくなります。情報収集の段階で社内の認識を揃えておくことが、良い制作の第一歩になります。