企業が発信する情報よりも信頼しているユーザーが発信している情報の方がより信用度が高い。
これは同時に、やみくもに認知されればそれでOKというわけではなく、認知の質が問われるということを指すことにもなる。
SNSでの情報取得が主流になっていく中で企業は必死にSNSでの情報発信を試みている。しかし、打てば当たる感覚で発信を続けていても何の意味もなさない。それは先ほどあげた認知の質が大きく関係してくるからである。
タイトルにあるファンマーケティングだが、マーケティングにファンを取り込むことで、より素晴らしいマーケティングができるということをこの記事で説明し、ファンマーケティングを取り入れるべき理由を理解していただきたい。
認知の質についてもう少し掘り下げていこう。
コストをかければそれなりに認知を増やすことは容易にできる。街中の看板、ネット広告、メール広告、認知手段はいくらでもある。しかし、認知されることはただの入り口でしかない。実際には認知されてからいかにコンバージョン(目標達成:例えば資料ダウンロードやお問合わせに至ることをコンバージョンという)してもらえるかが重要である。
その意味で単純に認知を促すというよりは、より高いコンバージョン率を生み出す質の高い認知をしてもらうことが重要になってくる。とりあえずPV数を稼げばよいという話でもない。
では次にファンとはなだろうか。
ファンというのはあなたの会社を熱狂的に支持してくれる人たちのことであり、一概には言えないが、あなたの会社の顧客の上位数%に位置する人たちである。
ファンは積極的に経済活動をしてくれたり、情報を外部に運んでくれる。
この人たちは他の顧客よりも圧倒的にあなたの会社のことを信用している。あってはならないことであるが、多少の粗相があっても信用してついてきてくれるぐらいに強い結びつきがある人たちだ。
ファンの周りにも当然人間関係がある。ファンの言葉はその人たちに大きな影響力をもっている。
「○○を使ってみたいんだけどこれはすごくいいんだ!」
信用できる人のたったのこの一言で商品の購入を決めたことはないだろうか。よくある話だ。「安心を買う」という言葉があるように購買活動においては安心感は非常に重要だ。
おかしな話ではあるが、根拠のない安心感でもあった方がいいのだ。
友人の一言(しかも理屈なしのフィーリング)が、企業が集めた信用あるデータを超えることがある。
当然、企業として信用あるデータを集め、それを公開するに越したことはない。しかしここで言いたいのはそれだけファンが周囲に与える影響は大きいということだ。特にこのSNS時代においては。
ここまでで、ファンの言葉が認知の質を高めてくれることをご理解いただけたのではないだろうか?これがファンマーケティングを取り入れるべき理由である。
ではできるだけ多くの人に、ファンの言葉を聞いてもらい、質の高い認知をより広域に広めるためにはどうしたらよいだろうか。それをやることがファンマーケティングである。
ファンマーケティングにおいては、SNSが存分にその力を発揮してくれる。といってもSNSは多岐に渡るから十分にそれら特性を理解して使い分けるべきである。
facebookは長文が投稿できるから、ストーリー性のある投稿ができる。
1つ1つの投稿でユーザーと深く関わる(ユーザーに大きな印象を残す)ことが可能だ。ただわりとクローズドな環境(不特定多数の人と繋がるというよりは知り合いとの繋がりが主)であるため、ユーザーが軽い気持ちでシェアすることはほとんどない。
しかしfacebookは他のSNSと比較して、クローズドな環境な分、周りに与える影響力は大きい。1人のファンの影響力を借りるには一番効力が高いSNSと言えるだろう。
タイムラインが次々と更新されていくため、埋もれやすい反面、比較的リツイートなどシェアはされやすい。140文字の制限もあってシンプルな投稿が多く、facebookのような深い話がシェアされる傾向はない。また繋がりはfacebookと違い、オープンな環境で知り合い以外との繋がりが主なので、その意味では1人のファンが周囲に与える影響力はかなり小さい。期待されるのはシェアの連鎖、つまり認知の質よりも数ということになるだろう。
Instagramは女性ユーザーが多く、写真がメインであることが特徴的である。魅力的な写真によって感情に訴えかけ一気に購買意欲を高めることができる。論理で訴えかける(例えばエコカーの燃費を訴える)など、商品によっては全く不向きなSNSとなる。
ファンをつくる最も確実な手段は常に顧客の期待を超えていくものを提供し続けることではないだろうか。期待を超えるというのは2つの意味でそうである。
一つはサービスの質
一つは商品・製品の質
サービスの質というのは、顧客との接点におけるクオリティを指している。
例えば打合せ時のおもてなしや丁寧さ、メールや電話一つの中に隠れている気遣いなどから、納品後のアフターサービスであったりなど、人としてどう顧客と接するかである。
商品・製品の質というのは、モノのクオリティを指している。
モノといったが、コンテンツでもよい(例えばコンサルタントが提供するフィードバックなど)。
当然ビジネスというのは提供するものがあってのものであり、そのクオリティが担保されていなければ満足度は得られない。
この2点において期待を超えるものを提供することがファンづくりに必要な条件だろう。
特に前者においては忘れられがちであるがかなり重要だ。ビジネスでもなんでも人との繋がりを粗末にしてはならない。
また、これに加え、もう一つ重要なことが世界観づくりである。
場作りといってもよい。顧客が安心していられる場・落ち着いていられる場・モチベーションがあがる場などそれぞれにあった場を作るのだ。
ライザップは、黒とゴールドからなる配色があの見違えるほどのビフォーアフターをさらに強く打ち出す演出をしている。あれがピンクや淡いブルーでは印象はまるで変わり、顧客どころかスタッフのモチベーションもさがるかもしれない。
顧客がいたいと思う場作り、世界観を作ろう。
IT社会は技術の進歩が急速過ぎて追いつくのが精一杯かもしれない。小手先のテクニックで集客したり、売上を伸ばしたりしても、そういったものはいつもすぐに変わる。常に追いかけるのはとても疲れるだろう。
しかし安心していただきたい。
ファン作りの根底にあるものはいつの時代も普遍である。どうしたら人から愛されるのかを考えればよい。経済活動をする立場としては利を求めたくなるが、よい人間関係を築くときは利よりも情である。
目の前に困っている人がいたらその人からお金をもらうことを考える前にまずは手を差し伸べよう。
その人があなた(の会社)に対して自然と心地よさを感じたのなら、向こうから歩みよってきてくれるだろう。
利よりも情、この仕組みは時代が変わっても変わることはないだろう。