筆者がよく行くカフェの前に釣具屋がある。昔はよく釣りをしていたなと思い、ふと立ち寄ってみた。
竿やリールを色々見ていたが、どれも思ったよりも高かった。釣りをやっていたのは小学生のころだったから、当時は子供用の安いものしか使ったことがなかったせいだろう。
しかし、すぐに入り口からすぐの場所にこれから釣りを始める人向けの竿とリールのセットが6,000円という格安で売っていた。思い返せば筆者が小学生の頃に通っていた釣具屋もそう、入り口に初心者用の竿とリールが売っていたことを思い出した。
筆者はそのとき店舗の入り口に何をおくべきかの重要性を考えた。すでに釣りをしている人、つまりその店にとっては割りとたやすく商品を購入してくれる人だが、そういった人はだいたい釣具の価格帯を知っている。しかし、これから釣りを始めようかどうか悩んでいるという潜在顧客は価格帯を知らない。
できるだけ釣りをその場で始めようと決断し、購入してもらいたい、あるいは後日購入しに来てほしいものだが、店舗に入るやいなや「釣具ってこんなに高いんだ…」と思われ敬遠されては客を逃す可能性がある。
よく釣りをする人は何も言われなくても店舗の奥の方まで足を運ぶだろうが、釣りをしない人にとっては入り口付近でまずは物色するものだ。ハードルが高い商品ばかりがそこに並んでいれば立ち去られてしまう。
Webサイトでも同じことがいえる。初めてその類の商品・サービスに触れる客をしっかり取り込もうと思うのであれば、トップページからいかにも専門家である雰囲気を出しては敬遠されるだろう。専門的な分野の商品・サービスであれば初心者用ページを儲け、バナーリンクをはるなどの対応を考えたい。
もちろんターゲットを絞ることは重要なのでその施策がベストとはいえない。しかし、積極的に初心者の客を取り入れていき、将来的なロイヤルカスタマーに育てようというのであれば、考えておきたい施策だ。
ところで店舗レイアウトでいうとマツキヨの店舗レイアウト戦略も勉強になる。店先には格安商品を配置、入ってすぐの場所には高額商品を置いている。店先に格安商品を置くのは客を引き寄せるため、入ってすぐの場所に高額商品を置くのは高い商品をはじめに見せておくことで、他の商品が安く見えるからだ。
この心理は実際によく使われる方法で、商品を松竹梅のように3段階のレベルをつくる理由もそうだ。一番高い商品は売ることが目的である以外に2番目に高い商品を安く見せたいとう意図がある。
また、マツキヨは階段にも商品を陳列している。「階段を登る」というのは客にとってはハードルなのだ。商品を見ながら階段を登れることで階段を登るハードルをさげている。
このことを知ってから(実際はどうなのかはわからないが)店舗が1階とB1階の構造になっているところは階段を登るよりも降りることの方がハードルが低いことを利用しているのだろうか、と筆者は考えるようになった(単純に土地の問題である気もするが)。
マツキヨは心理的にスムーズな導線をかなり意識していることがわかる。店先に格安商品を置くことも、階段に商品を並べることも、ターゲットの心理をよく理解し、一つ一つターゲットの中に潜在的にあるハードルを取り除いている。
Webサイトもそうであるべきだ。基本的によほどのブランド力がない限りはターゲットはWebサイトにアクセスしてきた時点であなたの会社のことを信用していないだろう。特にWebサイトのような無形物を人はすぐに信用したりしない。だからユーザーがコンバージョンするまでには高いハードルがいくつもあると考えていた方がよい。
トップページからお問い合わせまでの間にどんなコンテンツがあれば心理的にスムーズにコンバージョンしてもらえるだろうか、マツキヨの例を参考に考えてみていただきたい。
店舗とWebでは心理面が少し異なる。店舗は実物がおいてあるが、Webは基本的には情報しかないし、レイアウトや見せ方もできることにかなり違いがある。
しかし、根本的なところで、客の気をどう惹きつけ、その場でいかに購買意欲を駆り立てるかという点では同じではないだろうか。普段目にする光景や自分が体験している中からもWeb戦略のヒントは得られる。