企業のWeb/広報担当者として、どのようにしてWebマーケティング戦略を作ったら良いのか、わからない方も少なくないだろう。このシリーズでは、Webに精通していないWeb/広報担当者の方でも理解しやすいよう、Webマーケティング戦略の作り方を説明したい。
ターゲットの分析を行うことでWebサイトの訴求精度をより高めることができる。この記事では本質的なターゲット分析とは何か、そしてそれをどうWebサイトのコンテンツ作りに活かしていくのかを説明していく。
あなたの会社のビジネスは誰の何を解決するものだろうか?
ビジネスは、端的にいうとターゲットの悩みを解決して理想の将来像を手に入れてもらい、その対価を企業が得ることではないだろうか。商品・サービスを売り込むためには、そのターゲットの悩みの解決策を提示する必要があるが、図説すると下図のようになる。
この“悩みを持つターゲット”と“将来像”と“解決策”の3つの関係は非常に重要で、あくまでもあなたの会社が提示する解決策はそのターゲットに向けて発信をしなければならない。当たり前のことだが、突き詰めると意外と奥が深いので説明していきたい。
まずターゲットがWebサイトで目にするすべてのことが、ターゲットを意識して作られているべきである。キャッチコピー、ファーストビュー(アクセスした際にスクロールせずに見える範囲)、商品説明の仕方、写真の見せ方、ブランド観…etc.
そして訴求は具体的でなければならない。
成績が伸び悩んでいる受験生に向けて、「成績が伸びるよ」といっても響かないだろう。その受験生が何でつまずいているかわからないからである。英語ができないのかもしれないし、そもそも学習効率の悪さを嘆いているのかもしれないし、今から受験までに偏差値をあげることが可能なのか不安なのかもしれない。
「成績が伸びない」は悩みのカテゴリーであって、悩みそのものではない。悩みの本質は「英語の勉強方法がわからない」「学習効率が低い」「受験まで間に合うのか」など、もう一つ奥にあるだろう。
この辺りは競合の有無も関係している。
その地域に学習塾がそもそもなく、学習塾がないこと自体が悩みなのであれば、「成績が伸びる」のキャッチコピーで学習塾を作るだけで十分かもしれない。しかし、学習塾はたくさんあってそれ自体に悩みはないが、自分の能力にあった学習塾がどこなのかを探しているのであれば、やはり「成績が伸びるよ」では悩みの解決策を提示していることにはならない。
他にも例をあげると、背中のニキビで悩んでいる人に「ニキビ薬」と提示するよりも「背中ニキビ薬」と提示する方が、訴求力がある。つまりターゲットを明確にするということは、商品の訴求方法をより具体的にすることに役立つのだ。
ターゲットの悩みの本質にアプローチできれば成約率はあがるし、一方で抽象的なアプローチであればあるほど、ビジネスが成立する角度は落ちるだろう。
ただあまり難しく考える必要はなく、そもそもターゲットは商品設計時に絞り込まれているはずである。ここでやるべきことは再度それを思い出して、そのターゲットに対する訴求方法として何が一番効くのかを見直すことである。
もし、商品設計時のターゲティングが曖昧だったり、実際リリース後の市場の反応を見てターゲティングの変更を検討するのであれば、良い機会なので改めてしっかりターゲティングをしていこう。
先ほどの学習塾の例では、ターゲットのことをもう一歩踏み込んで考えると「偏差値40から1年で国立を目指せる!」などのキャッチコピーが浮かんでくるのではないだろうか。
さらにターゲット目線になって考えてみると、なぜそれが可能なのか、実績はあるのかなど色々と気になる。そうすると「偏差値40から国立合格を実現してきたカリキュラムのご紹介」というコンテンツが考えられるかもしれない。
そして、その訴求が嘘ではなく真実であることを訴えかけることも忘れてはいけない。基本的にはターゲットはいきなりあなたの会社を信用することはないだろう。あなたはあなたの会社の実態を知っているから自分たちが信用されるべき企業だと思っていても、ユーザーはあなたの会社の実態を知らないことを常に考慮しておくべきだろう。
また、企業側は自社の商品のことをユーザーが理解していると思っていても、実際は意外とそうでなかったというケースもある。ターゲットが商品・サービス選定で迷うことながいように、情報の伝え方が最適化どうかを再度意識することもここでは重要だ。(例として下図の上段参照:あんまんか肉まんかスペックが分からない・・・コンビニでさすがにこんなことはないが例として)
それから、企業にとってはデフォルトの仕様がゆえに、特徴でもないと思っていることが、ユーザーにとっては「それがいいんだ」ということもあります。
たとえば下図のようなことが言えるだろう。
何を訴求すればターゲットに自分ごと化してもらえるのか調査し、検討しよう。
Web業界ではターゲットを分析する際、カスタマージャーニーマップという概念を使うことが主流になってきた。これはスマホや身の回りのテクノロジーの進化により、人の行動も多様化してきたことで、単純にAIDMAやAISASのような消費活動モデルを購買フローとして考えるのでは不十分だという考えに基づいている。
カスタマージャーニーマップとは消費活動の一連の流れに、人の感情やどこで何をしているのかなどの環境・状況を組み込んだモデルだ。
このカスタマージャーニーマップでは、PCで情報を取得しているのか、スマホで取得しているのか、はたまたテレビで取得しているのかなど、様々なチャンネルやその状況を把握することで、より現代人の行動に沿った形で課題を突き詰め、戦略を練ることができる。
情報のとり方も、検索で情報を取得するパターンもあればSNSのタイムラインから取得するパターンもあるなど、様々なので、このあたりもターゲットの特徴と各種媒体の情報伝達の特徴に合わせて検討する。
例えばインスタグラムが流行っているからといってインスタグラムを導入するのは早計で、インスタグラムは写真で訴求できるものでなければ意味がないし、女性ユーザーが多いことなど、市場の実態を知った上で、ターゲットユーザーと照らし合わせて検討するのがよいだろう。
あなたの会社のWebサイトはターゲットがスムーズに情報を取得できる様に最適化されているだろうか。
ターゲットに効果的に訴求するためにはこのような細かいターゲット分析が効果的なので、自社のターゲット分析とWebの活用について改めて見直してみると気づきがあるかもしれない。
ターゲットの本質的な悩みを理解したダイレクトに突き刺さる訴求方法を実施することで、ターゲットに自分ごとだと思ってもらえるWebサイトにしよう。
■ターゲットの本当の悩みは何だろうか?
■ターゲットの情報取得環境に合わせた情報発信ができているか