企業のWeb/広報担当者として、どのようにしてWebマーケティング戦略を作ったら良いのか、わからない方も少なくないだろう。このシリーズでは、Webに精通していないWeb/広報担当者の方でも理解しやすいよう、Webマーケティング戦略の作り方を説明したい。
本記事ではWebサイトの売上力アップの3要素「アクセス数」「CVR」「LTV」の「CVR(コンバージョン率)」について具体的にどのようにして施策を検討すべきかを解説したい。
アクセス数についてはこちらにまとめたので参考にしていただきたい。
WEBマーケティング戦略の作り方:アクセス数アップと認知の質向上施策
また、売上力アップの3要素についてはこちらを参照いただきたい。
WEBマーケティング戦略の作り方:Webサイトの売上力編
CVRはConversion Rateの略でコンバージョン率である。コンバージョンというのは、平たくいうと目標の達成のことである。
Webサイトのコンバージョンは例えば、資料請求だったり、お問合わせだったりする。資料請求をコンバージョンにした場合、アクセスに対する資料請求数の割合が1%であるなら、CVRが1%という
問い合わせをもらうなど、コンバージョンしてもらうためには、以下の3つが必要だろう。
コンバージョンに必要な要素を分解して考えることで、Webサイトでどのようなコンテンツが必要になってくるか、そしてそのコンテンツで具体的に訴求すべきことが見えてくる。
それからもう1つ前提として頭の中に入れておきたいことは、集客に必要な大原則は、「ターゲットが必要としているものを提供する約束をする」ことである。このことを念頭に、上記3つの具体的な施策を検討していきたい。
当然であるが商品・サービスの信頼感は必要不可欠である。問題はどのようにしてその信頼感を得るかである。ここではWebマーケティングに限った話とするので、対面営業等での手法については書かずWebサイト上の戦略について説明していきたい。
箇条書きで最初にまとめると、Webサイト上でできる商品・サービスへの信頼付与は以下である。
実績が豊富な場合はいかに多くの実績をあげてきたかを訴求しよう。実際に多くのユーザーの力になってきたことはターゲットにとっても安心材料となる。実績が少ない場合でも有効的な手段はある。掲載できる実績についてより細かい実績をPRするのが良いだろう。例えばどのような背景・悩みをもったユーザーに、どんな提案をして、実際にどのような結果が出たのかなど、1つの実績をストーリー仕立てでより細かく訴求することで、少ない実績でもターゲットに与える影響は大きい。
論証は、なぜ成果が出るのかを論理的に示したものであり、実証は実証実験やユーザーの声から実際の結果を示す。論証ができる商品・サービスは限られるが、論証とまではいかずとも統計的な観点から訴求ができるものはそれでも十分効果はあるだろう。
実証の部分でも出てきたが、ユーザーの声は信頼を得るには大きな効果を発揮する。可能ならクライアントの実名や企業名を出すのが良いだろう。中には顔写真まで掲載しているところもある。ユーザーが掲載されて喜ぶようなデザインされたページを用意しておくのも大切だ。
優位性は他社と比較したときに最も訴求力が高まる。コスト、質、スピード、アフターケア、リスクヘッジ、様々な観点から他社と比較し、自社が最も打ち出せる優位性を探し出し、打ち出そう。
掲載メディアの一覧や、大手取引先の一覧など、誰もが知るような第三者との繋がりがあれば、一覧化して掲載しておくことで信頼に繋がる。ただ、本質的に信用されているわけではないので、フックにはなるが、決定打にはならないだろう。逆に大手取引先一覧があると中小企業からは「大きな予算がないと利用できない」と思われる可能性も十分にある。どんなコンテンツもそうであるが、ターゲットの立場に立ったときにその施策がどう見えるかは常に意識しておきたい。
せっかく、商品・サービスが良いと思ってもらっても、企業として信頼できず、警戒されるケースがある。例えば広告をクリックしてランディングページを開いたとしよう。ランディングページが素晴らしい出来で、どんな会社がやっているサービスだろうと企業名を検索あるいはランディングページのリンクから企業ホームページに飛んだはいいが、企業のホームページがいかにも胡散臭い出来で、問い合わせに躊躇してしまうケースはあるだろう。
良いサービスだと思って営業マンとの商談の場に入ったはいいが、営業マンが残念な人物で冷めた、なんてことは経験したことがある人も少なくないと思うが、それと似たようなことだ。
では企業として信頼感を得るため、少なくとも不信に思われないためにはどのような準備が必要だろうか。Webサイト上でできることに以下がある。
資本金や社員数、組織図などは企業の規模感を示す意味で(ビジネスの内容によるが)信頼性に繋がることもある。もちろん、無理に書く必要があるところではないため、書くことがメリットになる場合は書こう。
会社の規模感が小さくても、企業理念やミッション、社長メッセージなど、企業としての考え方や方針はしっかり示しておくとよいだろう。問い合わせなどコンバージョンする前に「どんな会社か?」は気にされるケースが多いため、できるだけ企業自体の情報は掲載しておくのがよい。
人の顔が見えないより見えたほうがよいので、人数が少なかったり、オフィスが小さい場合を除き、できれば掲載しておきたい。スタッフ紹介というコンテンツにこだわる必要はなく、ホームページのデザインの中に実際のスタッフやオフィスの写真が紛れ込んでいるパターンでもよいだろう。設備力がものを言う場合は、設備力をPRすることも漏れなく対応したい。
ホームページの中身がすかすかだったり、デザインが胡散臭くては第一印象が良くないだろう。コンテンツの充実と、デザインの最適化は最低限やっておこう。ぱっと見のコンテンツ量とデザインは、印象に大きく影響する。
注意したいのは、デザイントレンドが大切なのではなく、ターゲットにあったデザインが必要なことである。単純にトレンドに合わせたがために、リニューアル後にコンバージョン率が下がったケースは実際に聞いたことがある。
問い合わせ等のコンバージョンとなるアクションをしてもらう必要性について考えてみていただきたい。問答無用でどう考えてもあなたの会社の商品・サービスにすべきであれば、特にここは読み飛ばしていただいても良いかもしれない。しかし、競合他社は必ずいるし、どの企業の商品・サービスにもメリットがあるだろう。その中であなたの企業に今まさに問い合わせをしてもらうためには、最終的に問い合わせをすると決断してもらう動機の付与が必要ではなかろうか。
問い合わせフォームまで来て離脱するターゲットは多い。あとひと押しがあればコンバージョン率の改善に繋げられるようなWebサイトも多くある。最後の最後にひと押しする方法として、問い合わせの動機づけについて考えてみていただきたい。
以下のような動機づくりが考えれるだろう。
タイムセールや期間限定オプションは物販系ではよくある手法で誰しも見たことがあるだろう。初月無料もそうで、サブスクリプション型(継続課金)のビジネスモデルではよくある手法だ。初月無料以外にも、いつでもすぐに解約ができたり、解約を日割り対応するなどで、初期導入時のハードルが極端に低くするケースが多い。在庫数の表示については、残り数が少なくなると、欲しいものがなくならないうちに購入しておこうという消費者心理を利用したものだ。似たものに宿予約サイトの「今◯◯人が見ています」という表示も最近では見られる。
最後に「今それを申し込むことの重要性の再確認を追求」とは、早めに申し込むことがターゲットにとってよりメリットである場合などに使える。例えば、美容など、若いうちから対策をしておくことが将来のためになるようなものは、今から始めることが大切であることを訴求すると良いだろう。
これまで、コンバージョン率を高めるための施策として、3つの観点(商品・サービスの信頼感 / 企業としての信頼感 / 問い合わせ等のアクションに対する動機づけ)から説明してきた。本記事の後半では、ターゲットの購買フローと各フローにおける購買意欲の観点からコンバージョンさせるためのコンテンツとして何が必要かを説明していきたい。
来訪するユーザーの購買意欲レベルは様々である。ユーザーの購買フローを定義し、購買意欲レベルに合わせたコンテンツ作りをすることで、よりユーザーに刺さるコンテンツを作ることができる。まず、AIDMAなど一般的な購買フローを図示すると下図のようになる。
上図の購買フローをもとに、ユーザーの購買意欲を高め、認知から購入へと一つコマを進めるためのコンテンツ作りについて考えよう。
まず、ユーザーの購買意欲レベルをわかりやすく大きく以下の3つに分けて考える。もちろん、あなたの会社のビジネスモデルによっては多少異なるかもしれないが、Web戦略を作成する際の参考にしていただきたい。
【ユーザーの購買意欲レベルを3つに分ける】
先述した購買フローで図示すると下図のようになる。
各レベルに応じたコンテンツを準備し、それぞれのターゲットを次のステップに誘導しよう。つまり、検討初期段階であれば、検討初期段階相応の悩みがあるので、それを解決するコンテンツを提供することで、購買意欲レベルを次の「悩み中」のレベルに持っていくということである。
そうすると以下のようなコンテンツが必要であることがわかる。
■必要なコンテンツ
【コンテンツA】
「検討初期段階」から「比較/悩み中」にコマを進めるコンテンツ
【コンテンツB】
「比較/悩み中」から「購入直前」にコマを進めるコンテンツ
【コンテンツC】
「購入直前」から申し込みあるいは来店などコンバージョンさせるコンテンツ
各コンテンツについてもう少し具体的に書くと、以下のようにまとめられる。
【コンテンツA】
商品・サービスに対して知識を深めてもらうためのダウンロード資料やオンラインコンテンツを提供することが一つ考えられる。そして、そのダウンロード数をコンバージョンとしてCVRを測定し、改善していくことが運用の一つの目的となる。
【コンテンツB】
他社との違いなどあなたの会社を選ばなければならない理由を訴求するコンテンツが効果的だろう。
【コンテンツC】
購入直前ターゲットにはインセンティブが有効だ。今迷っているその背中をポンと押してあげることで成約につながるだろう。
購買意欲レベルに応じたコンテンツを作成し、しっかりと次のステップへ誘導するためにどのようなコンテンツが必要であるかを考えよう。
学習塾の例でいうと下図のように考えることができるだろう。
2種類の観点からCVR(コンバージョン率)を高めるための施策について解説してきた。
1つは、CVRを高める原則として以下の3つをユーザーに与えることが必要であるということ。
もう1つは、ユーザーの購買意欲を3つにわけて考え(検討初期段階、悩み中、購入直前)、必要なコンテンツを整理するということ。
様々な角度からコンテンツを検討し、必要なコンテンツを抜けもれなく準備しよう。