企業のWeb/広報担当者として、どのようにしてWebマーケティング戦略を作ったら良いのか、わからない方も少なくないだろう。このシリーズでは、Webに精通していないWeb/広報担当者の方でも理解しやすいよう、Webマーケティング戦略の作り方を説明したい。
本記事ではWebサイトの売上力アップの3要素「アクセス数」「CVR」「LTV」の「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」について具体的にどのようにして施策を検討すべきかを解説したい。
売上力アップの3要素のうち、アクセス数とCVRについては以下にまとめたので参考にしていただきたい。
アクセス数:WEBマーケティング戦略の作り方:アクセス数アップと認知の質向上施策
CVR:WEBマーケティング戦略の作り方:コンバージョン率をあげる編
また、売上力アップの3要素についてはこちらを参照いただきたい。
WEBマーケティング戦略の作り方:Webサイトの売上力編
LTVはLife Time Valueの略で顧客生涯価値と言われ、顧客に対して提供できる価値の総量を指す。商品を一度購入して終わりではなく、その後もリピートしてくれたり、商品をグレードアップしてくれる顧客はLTVが高く、単価が高い。
Webサイトではアクセス数を集めること、コンバージョン率を高めることに加えて、このLTVを高めることも重要な点として認識しておきたい。
WebサイトにおけるLTV向上のポイントは以下のようなことが考えられる。
【WebサイトにおけるLTV向上のポイント】
商品やビジネスモデルによってできることとできないこともある。またここに書いていないことでもLTV向上施策があるかもしれない。このあたりは個別に検討する必要があるが、上記7点について、例をあげておくので、あなたの会社のLTVアップを検討する際の参考にしていただきたい。
関連商品についても訴求の方法は色々ある。ECサイトのAmazonでは、「よく一緒に購入されている商品」、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の2パターンの訴求方法がある。
例えばカメラの商品ページには三脚を同時購入することを進めてくるなど、「そういえばこれも必要だった」「これもあると便利だ」というような商品が次々と出てくる。
関連商品といっても、カテゴリーが同じものをランダム表示させるような施策ではなく、その商品と組み合わせて使うことで効果を発揮する商品をオススメするなど、購買に必然性を持たせることができるような商品を提案できれば良いだろう。
購買意欲が高まり、商品・サービスを購入すると決めたターゲットに対しては、できるだけ高額商品の購入など単価アップ施策を考えたいものだ。ワンランク上の商品を勧めるか、オプションを付けて単価をあげるなど、やり方は様々である。効果的な方法としては高額商品に対して「お得感」や「安心感」を訴求することだろう。
「せっかくなら良いものにしよう」そう思っているターゲットに対しては、お得感を打ち出す訴求は効果的だ。例えば、出前サービスなら、あと少し金額を追加すると金額以上にリッチなものが付いてくるようなお得感を上手く出せるとよいだろう。
安心・安全が問われる商品については、ワンランク上の高額商品がいかにターゲットの不安を解消できるのかを訴求することが効果的である。
もちろん他にもスピードに対する安心感などを高額商品に対して訴求することで単価をあげていくことも考えられる。
ワンランク上の商品が標準の商品に対してどういう悩みを解消するものなのか(どういう特徴があるものなのか)、もう一度整理し、ユーザーへの訴求の仕方を見直してみると施策が見えてくるかもしれない。
また、まずはお手頃価格の商品を全面に出しておき、それ目当てに訪れたユーザーの欲を刺激し、ワンランク上の商品の購入につなげるという手法もある。
入り口(Webサイトへアクセスする動機)とゴール(実際に購入するもの)が同じでなければいけないという縛りはない。
入り口には気軽に検討できそうな商品を置いておき、最終的にはワンランク上の商品を訴求していくのも良い。この辺りを考えた上でWebサイト設計をしている企業も少なくない。
リピートしてもらえるかどうかは、技術的なテクニックではなく、Webサイトのコンテンツの質の高さ、商品の質の高さによる。ターゲットがまた再訪して商品を購入・契約する理由はあなたの会社に強い関心があるからに他ならない。ターゲットが持っている悩みに対して他のどこよりもよい提案ができているのか客観的に見てみよう。○○のことで悩んだら株式会社○○のサイトにいけば解決できるかも、と思わせることができたらしめたものだ。
また、まずは商品を経験してもらうという方法も効果的である。まずは無料で体験してもらったり、デモ動画を流すことで疑似体験してもらったり、初回大幅値引きでサービスを受けてもらうなど、やり方は様々だが、Webサイトで情報を見ているよりも確実にレベルの高い訴求ができるだろう。
良い体験を提供し、次回リピートした際にもっとよいものを購入・成約してもらう方法も検討すべきである。
毎月発行している雑誌であれば、単発で購入してもらうよりは、年間契約など定期購入してもらった方がよい。もし定期購読の方がオトクなのであればいかにその定期購読がオトクなのかを訴求できているだろうか。
訴求というのはただ提示することではない。単発から定期にその場で動かすためには、相手を論理的に説得しながら、感情的に購入に向かわせなくてはならないだろう。
つまり「説得」をさせ「ワクワク」を提供することが重要なのだ。3,000円の商品を購入しようと思っていたユーザーを、年間契約で(割引して)30,000円の商品の契約に切り替えさせることは早々簡単ではない。
しかし、理屈と感情の両面から訴求できればユーザーの心を動かすことができる。
企業そのものへの興味関心/満足度が高い場合は、今後商品の買い替えはもちろん、関連商品を購入する際に、競合他社との競争で非常に有利になる。これはWebサイトだけでどうこうなる話ではなく、当然その商品自体が良かったかどうかが一番大きいのだが、ターゲットから適切なブランドイメージで企業を認知してもらうことは必要であり、Webサイト上でのブランディング活動において意識すべきことである。
では、Webサイトにおける、LTVの改善のためのブランディング戦略とは何だろうか?
それはブランドイメージにあった世界観を表現し、Webサイトを閲覧している間、ターゲットにその世界観に浸ってもらうことである。Webサイトの世界観をどう表現するかによって、ターゲットから見たブランドイメージが大きく変わるだろう。(ブランディング活動はWebサイトだけでなく、印刷物や実際の商品、パッケージングや、時には電話応対の方法など含めたあらゆるユーザーと企業の接点において実施されるべきことであり、すべてにおいて世界観は重要である。)
どういった顧客を取り込んでいきたいのか、その顧客に突き刺さる世界観を決めて、Webサイトで打ち出そう。例えば、ライザップのWebサイトがブラックやゴールドを使わず黄色や青などのポップなカラーで作られていたら世界観は一気に崩れてしまうだろう。カラー以外にも要素はたくさんあり、細部の仕様まで含めて、世界観を統一する必要がある。
ティファニーのWebサイトでは、ジュエリー一覧ページに値段が表示されていない。他のジュエリーサイトでは商品一覧に値段が書かれているところも多いのだが、ティファニーの場合は、マウスオーバーすると値段が表示される仕様になっている。ECサイトという概念においては、それは使い勝手が悪いように見えるが、ティファニーというブランド・世界観の中において、値段など余計な情報を表示することを控えたのだろう。それによって、ジュエリーの写真がより見栄えするように、戦略的に考えたのではないだろうか。要するにコスト重視よりも品質重視であることをWebサイトの見せ方でもこだわったということだろう。
また、Webサイトでも新しい表現技術は次々と出てくる。最近では動画が主流になってきたが、動画を制作してアップすることがブランディングに繋がるケースも十分にある。あなたの会社の世界観を打ち出すために有効なツールなど使えるものは使っていきたい。
ブランディング戦略には発信も欠かせない。メルマガやブログなど、ターゲットや顧客へのアプローチ方法として最適なツールを使って、発信を続けよう。
ちなみに世界観の共有は社内だけではなく、制作会社との間でもしておかなければならない。ここにズレがあると意図したブランディングができなくなるので、ズレのない共有が必要だ。
1ついい方法としては、雑誌の切り抜きやWeb上の画像のトリミングでも何でもいいので、実際に世の中にあるものであなたの会社の世界観にマッチしたものを集めておき、「表現したい世界観」と「これはNGパターン」というように整理しておくことだ。そして制作会社に依頼する際にそれを共有することで、出したい世界観にマッチしたデザインを提案してもらえるだろう。
メルマガや登録制・会員制のサービスを提供することで顧客を囲い込むことができる。それによっていつでもこちらからアプローチできるようになる。結果LTVをあげることができる。メルマガ登録率や会員化率などの指標を測定しながらPDCAを回すことで、効率的に会員を増やす方法が見えてくるだろう。
ただ、ユーザーが会員登録するメリット、そして会員で有り続けるメリットは戦略的に考えておこう。
SNSの活性化によりユーザー先導型のコミュニティのあり方が現れた。企業が知らないところでユーザーがコミュニティを作り、そこで企業ブランドが育て上げられるということが起きている。
いかにユーザー同士の自然なコミュニティの中で大切にされる企業になれるかが重要だ。
ユーザー同士のコミュニティに企業が割って入ってはならない。ただ、ユーザー同士で盛り上がってもらうための素材を準備することはできる。口コミマーケティングが上手な企業は何かと話題となるような素材を提供し続けている。
LTV向上のためにできることを施策に取り入れてみていただきたい。
■LTVの向上
・関連商品の訴求
・高額商品への誘導
・リピート率の改善
・単発ではなく定期購入への切り替え
・ブランディング戦略
・ユーザーを囲い込む
・ユーザーに囲い込まれる