企業のWeb/広報担当者として、どのようにしてWebマーケティング戦略を作ったら良いのか、わからない方も少なくないだろう。このシリーズでは、Webに精通していないWeb/広報担当者の方でも理解しやすいよう、Webマーケティング戦略の作り方を説明したい。
限られたリソースの中で効率的に運用していくためには、優先順位を立てて取り組む必要がある。「Webマーケティング戦略の作り方」シリーズでは、これまでに売上げアップの3つの要素の解説、そして3つの要素である「アクセス数」「CVR(コンバージョン率)」「LTV(顧客生涯価値)」を改善するための施策を明確にしてきた。本記事では施策の優先順位について解説していきたい。
【売上アップの3つの要素の参考記事】
WEBマーケティング戦略の作り方:Webサイトの売上力編
アクセス数:WEBマーケティング戦略の作り方:アクセス数アップと認知の質向上施策
CVR:WEBマーケティング戦略の作り方:コンバージョン率をあげる編
LTV:WEBマーケティング戦略の作り方:LTV向上編
売上げアップの3つの要素、「アクセス数」「CVR」「LTV」の中でどこが一番改善効果があるだろうか。言い方を変えるとどこが一番穴になっているだろうか。基本的には改善すると一番効く部分から対策を打っていきたいが、改善にかかる期間や会社としてのリソースなども加味した上で最終的に決めていきたい。
まずは対策にかかる時間を軸に、短期施策と中長期施策にわけて整理しよう。
それぞれWebサイトの売上力アップの要素をおさらいすると以下であった。
■認知の数を増やす
・自然流入
– オウンドメディアの運用
– 検索結果表示の最適化
– サイト構造の見直しなど技術的なSEO対策
・SNS
・広告運用
■CVRの向上
・検討初期段階のターゲット
・比較/悩み中のターゲット
・購入直前の今すぐターゲット
に対するコンテンツの見直し
■LTVの向上
・関連商品の訴求
・高額商品への誘導
・リピート率の改善
・単発ではなく定期購入への切り替え
・ブランディング戦略
・ユーザーを囲い込む
・ユーザーに囲い込まれる
それぞれを短期/中長期でわけると下図のようにまとめられる。
あなたの会社がやるべき施策を短期施策・中長期施策で分けて考えることは、計画的なWeb戦略を立てる上で重要だ。
アクセスアップは、中長期的施策の結果が出るまでの間、短期的施策で利益を確保することが望ましい。
CVRに対する施策はコンテンツの見直しになる。とにかく早くPDCAを回すことでいち早くCVRの高いWebサイトにしていくことができる。ただ、アクセス数がない時点で有用なCVRのデータ測定はできないのでアクセス数がある程度増えてから測定する考えで良いだろう。
LTVも短期施策は早くPDCAを回していくことであるが、中長期施策は企画段階から時間をかけてじっくりと慎重にやっていくべきである。
整理すると、一番改善効果がある部分を分析し、短期施策を実行しながら長期施策を対応していくやり方がよいだろう。ただし中長期施策は運用体制や方針など計画性が重要なのでその辺は早期に検討し、リソースが足りないのであればどう補うかを早い段階で考えておきたい。
以下、それぞれ施策について対策期間の観点(短期 or 中長期)から考えてみたい。
短期施策には
・広告運用
・検索結果表示の最適化
・サイト構造の見直しなど技術的なSEO対策
などがある。
費用はかかるが、必要なタイミングで集客できるのは大きなメリットである。ただし、Webサイトに誘導してからコンバージョンするようなコンテンツを作り込んでいなければ意味がない。広告を打つというのは、売れる仕組みが整っているが、認知数が足りないときにそれを補完するためのものであることを認識しておきたい。その意味では、コンテンツの作り込みが甘いのであれば、まずはコンテンツの作り込む方を優先的に対応すべきである。
すぐに対応できるため、検索結果画面からのクリック率が悪いようであればぜひ試してみていただきたい。ただ、あくまでも上位表示されていることを前提に考えられる施策であるのでまずは自社サイトがどのようなキーワードでどのくらいの順位にいるのかを調査しよう。
サイトの構造を根本的に見直す場合は改修範囲が大きくなるが、比較的簡単に修正できることも多いので制作会社に一度相談してみるとよいだろう。それだけですぐに上位表示されるというほどSEO対策は簡単ではないが、適切なサイト構造は中長期的であってもSEO対策として有効である。施策自体は短期でできるが、結果としては中長期的な視野が必要であるといえるだろう。
中長期施策には
・オウンドメディアの運用
・SNS運用
などがある。
オウンドメディアの運用には運用体制の確保が必要だ。運用体制ができていない状態で取り組んで継続できないのであれば、別のことに時間的リソースを割くいた方がよい。
運用体制は、誰がどのくらいの頻度で記事などのコンテンツを作っていくのか、外注する場合は中長期的な視野で予算を組むなど決める必要がある。もちろんそれらは中長期的な目標値(いつまでにどのくらいのアクセスを集めるかなど)を決めた上で逆算していくべきである。まずはどれだけのアクセスやコンバージョンが必要なのか目標を決めていこう。
SNSをこれから始める場合は中長期的な施策になる。広告を使えばわりと短期間でファンを集めることは可能だが。ファンを定着化させたり、購買意欲がない状態から購買活動をしてもらったりするためには時間がかかることを考慮しておきたい。
SNSの運用は(すでにブランドが浸透していない限り)継続的なファンとのコミュニケーションによる信頼関係の醸成がまず最初に必要で、その後ようやく購買活動に繋げられるようになる。
facebook、Twitter、Instagramなど様々なSNSがあるが、それぞれユーザー層も違うければ効果的な使い方も異なる。いずれにせよ、ファンを集めて初めて効果的なマーケティングツールとなるので、中長期的な見解が必要である。
CVR向上の施策は基本的にはコンテンツの作り込みに関係するため短期施策といえる。CVR向上の観点からコンテンツを見直し、効果を検証し、また施策を実行するというPDCAサイクルを回すことになる。
CVR向上のためのコンテンツの作り方については、以下の記事にまとめているので参考にしていただきたい。
WEBマーケティング戦略の作り方:コンバージョン率をあげる編
基本的にはコンテンツの中身は最初にしっかり作り込んでおき、デザインによる見せ方をPDCAを回しながら変えていき、最適なデザインを模索することになるだろう。
短期施策には
・関連商品の訴求
・高額商品への誘導
・リピート率の改善
・単発ではなく定期購入への切り替え
などがある。
アクセス数があるサイトであればこの施策の結果はすぐに見えてくるだろう。この施策でもCVRと同様、どのような見せ方をするのが一番良いかを議論しながらPDCAを回していくことになるだろう。
例えば関連商品の訴求は、どのタイミングでどのように表示するのか、定期購入への切替なら値段の見せ方をどのように見せるのか、デザインを中心にPDCAを回していくことになる。
中長期施策には、
・ブランディング戦略
・ユーザーを囲い込む
・ユーザーに囲い込まれる
などがある。
ブランディング戦略における世界観の見直しは、全体的なパッケージングの見直しや新規コンテンツ追加など、やることが広範囲に及ぶ上に継続的な発信など、場合によってはかなり重い施策になる。さらにそれらがターゲットにブランドとして認知されるようになるまでは、何度もリピートしてもらいながら接触時間を増やしていくなど、時間もかかる。
しかしブランディング戦略を上手く取り入れることで確実に競合他社に対して強い組織が作れるようになりますのでしっかりと取り組みたい。
ブランディングはWebサイトだけでやることではない。他のツールなどターゲットとの接点ポイントすべてにおいて一貫した対策が必要だ。その辺も考慮し、ターゲットとあなたの会社との接点をすべて洗い出し、ブランディング戦略としてどういう見せ方・接し方をするべきかを見直すことも必要になる。
ユーザーの囲い込みには、継続的な発信が必要だ。一度囲い込んだからといって疎かにしてはすぐにユーザーは離れていくし、囲い込んだところで安心していると結果的に成約につながらない。囲い込んだ後の対応が重要であり、ユーザーがそこに留まる必要性を提供し続けなければならない。骨の折れる作業ではあるが、アクセス数(や会員数)が増えれば増えるほど、ダイレクトに売上に結びつくので、会員制などの囲い込む戦略を取る場合は、会員になった後の満足度獲得に特に気を使おう。
また、ユーザー同士のコミュニティによって企業が逆に囲い込まれる現象があることを当シリーズ記事では書いたが、ユーザーが盛り上がるようなホットな話題を発信する体制を整えておきたい。
施策に以下2点を考慮しながら優先順位をつけて計画的に実行していこう。
一番改善効果のある部分について、短期施策を実行しながら長期施策を対応していくのがよいだろう。