企業が一方的に情報を発信する時代は終焉を迎え、いかにユーザー同士のコミュニケーションの中に企業を入れてもらえるかが重要になってきた。その意味で、ユーザーに共感されるというのは一つの重要なキーワードとなっている。共感されるコンテンツは、ただ売り込むことだけを考えた従来のコンテンツとは全く異なる。
ユーザーは共感することで、自らそれを取り入れたいと思ったり、他人にシェアしたいと思ったりする。
では共感されるためのコンテンツづくりとはどのようにしたらよいのだろうか。
人は普段は意識していなくとも、心の奥底に強い思想を持っている。平たくいうとそれは価値観というのだろうが、より人の根底にあるものという意味を含めて思想と書いた。自分が信じて疑わないものが人にはあって、それが企業の理念や商品・サービスの理念(創られた背景)などとマッチしていると共感をよぶ。
例えばフェアトレードやエシカル製品などはそうではないだろうか。不当な労働環境ではなく健全でフェアな労働環境から生まれたものを使おうという理念が、同じような思想をもった人には大きな共感を得られる。
他にも、就活サイトにおいては、様々なコンセプトの就活サイトが存在するが、それぞれ仕事選びの軸が異なる。例えば、仕事選びにおいて職場の雰囲気を重視するユーザー向けに、職場の雰囲気を動画撮影したものが見られるサービスなどもある。これもユーザーの仕事を選ぶ際の思想にマッチさせたものだといえる。
商品やサービスの背景にあるストーリーは共感を呼ぶ。どういう理念のもと、どんな人が生み出したものなのか、ユーザーは普段意識することのないことだが、こういった情報はユーザーの感情に到達し、商品・サービスに対するイメージを変えてくれる。
商品・サービスがただ目の前に置かれている場合、ユーザーはその商品・サービスにもともと興味あった場合を除いて、ほぼ興味を持たないだろう。しかし、ストーリーとセットになってアピールされている場合、ユーザーは商品そのものというよりはストーリーに興味をいだく。そしてストーリーは感情をゆさぶり、それを読み終える頃には、商品に興味をいだき始めているだろう。
このように商品そのものではなく、ストーリーに興味をもち、共感することで、商品・サービスに対するイメージを変えていくのだ。
人が口にしている悩みは意外と表面的なことも多い。自分の悩みの本質を言葉ですらすら言える人は多くはいないが、そういう悩みの本質を誰かが代弁してくれると「あぁ、そうなんだよね」と共感・納得される。
本人でも気づいていないことか、あるいは気づいていても解決できないものと思い込んで諦めていることに、アプローチできないか考えてみることは共感ポイントを見つけるヒントになる。
共感されるためにはどういうスタンスでいるかも大切だ。
控えめにいうのではない、声を大にして言うのだ。同じ考えを持っている人をあなたが引っ張っていくつもりでいう。ボソボソ言っている人について行く人はいないだろう。
同じようなことを言っている人がたくさんいても共感はされにくい。本質的には同じことを言っていても、人とは違う角度で物事を言うとよりその人らしさが出る。“らしさ”は非常に重要だ。
声を大にして言うと同じことだが、何度も同じことを言うことで、同じ考えを持っている人を引っ張っていく。
プロモーションはそのイメージが定着するまでやり続けることで本来の目的を達成する。
共感されるコンテンツを作っても、ユーザーがWebサイトでしか閲覧できず、他の接点では共感できなければ意味がない。どの接点においても、共感できるものに触れてもらうことでユーザーとの距離感がぐっと近くなる。一種のブランドとして定着していかなければ一瞬の熱量があがっただけで冷めてしまう。
例えば、コストをかけて有名メディアとのタイアップ企画をして、一時的にイメージアップしたり売上があがったりしたとしても、そのあとのイメージの持続性を考えた戦略をうっておかなければ本質的なマーケティングとはいえないだろう。
どこで触れても同じ共感要素を感じられるよう、戦略的に考えておきたい。