Webサイトの企画というのは制作会社だけで進めていくわけではない。制作会社が主体となって進めていくことには変わりないが、クライアントからの情報提供が欠かせない。
ヒアリングをしていると「たぶん○○だと思う」といったかなり担当者の想像レベルの曖昧な回答が返ってくることもあるのだが、企画の基となる重要事項のヒアリングにおいてその曖昧さは無駄を生む可能性が多いにある。
できれば関係部署にヒアリングの場に立ち会ってもらうか、クライアントのWeb担当者には事前(あるいは後)にしっかりと社内の意見をまとめてもらう必要がある。
それができていない状態で企画を進めると、あらゆる問題が発生する可能性があり、とてもよいWeb企画の方法とはいえない。
ここでは質の高いWeb企画が生むために知っておきたい5つのポイントを解説していきたい。
営業、マーケティング、総務など企業にはそれぞれの役割をもった部署がある。それぞれがWebサイトに対して「こうあって欲しい」という要望がある。そしてそれは必ずしも表面化されているわけではない。
つまり「Webサイトに要望はあるか?」という質問に対して、必ずしも本当に必要な要望が返ってくるわけではないということだ。実際に話を進めて要件を確定する間際に、他部署から意見が出ることはある。
意外と人は自分の潜在的な要望に気づいておらず、それがあるとき顕在化することがある。それには現状が普通だと思いこんでしまっていることや、Webサイトでどんなことができるのかわからないなどの理由があげられる。
だから、まずはそれぞれの業務フローを洗い出し、その中で改善点を洗い出しておくことをおすすめする。これはWebサイト制作に関係がないだろうことまであわせて全てやってみるとよいだろう。単純に社内業務効率化を検討する材料にもなるのでやっておいて無駄ということはない。
そして洗い出したものを制作会社と共有してみると、思ってもいなかったWebの活用法が生まれることはよくある。ヒアリング能力の高い制作会社はそういったことがわかっているから、一見Webサイトに関係なさそうなことでもビジネスコンサルタントであるかのようにヒアリングをするだろう。
特に顧客管理などシステム絡みのWeb制作においてはそれが顕著だといえるだろう。データの扱い方一つでその後の拡張性が変わる。
Web制作を検討しているのであれば、そういったビジネスコンサルタントのような視点をもってWeb企画をしてくれる制作会社を選ぶことも考えたい。
いずれにせよWebサイト制作は、業務改善の大きなチャンスだと認識して、部署間でしっかり現状の課題を洗い出しておくことが望ましい。
ターゲットの設定は意外と奥が深いのでしっかりとやっておこう。ここでミスってしまってはあとのWeb企画が総崩れになる可能性もある。
どんな人がどのようなタイミングでどうやってその情報を仕入れ、どのように関心を高め、購買活動に至るのか、ターゲットの購買フローを明確に整理しておきたい。
そしてターゲットの購買フローには物理的な影響と心理的な影響が入り混じっていることを知っておこう。
物理的な影響とは、どういったデバイスで情報を収集するのか、ネット検索なのかSNSなのか、店舗来店型なのか、メルマガなのか、といったこと。
心理的な影響とは、あなたの会社に対するイメージや、今すぐ購買活動をしなければいけない心理的理由など感情的な影響。
会社に対するイメージがよくなるコンテンツを制作しても(心理的影響)スマホに対応していなければ(物理的影響)その恩恵を受けることは難しく、購買活動を促進するのは難しい。
Instagramが流行っているからといってInstagramに写真をアップしても(物理的影響)、ターゲットのハートを射抜くような写真がアップできていなければ(心理的影響)意味がない。
ターゲット設定をした上で、そのターゲットに一番よい影響を与えるコンテンツを物理的・心理的な影響の側面から考えてみよう。
Webは企画・制作して終わりではない。運用していく中でPDCAを回していく必要がある。そしてPDCAを回すにあたっての前提条件、それが「仮説があること」だ。
仮説がなければWebの解析値を基にWebサイトを改善・向上しようと思っても、何が間違っていたのかわからない。仮説を立てていれば何が間違っていて、どこを修正すべきなのか絞り込むことができる。PDCAは仮説と検証の繰り返しである。
仮説についてもう少し詳しく触れると、例えばあなたが学習塾を運営しているとする。
学習塾の無料体験授業の申込みをしてもらうことがWebサイトの役割だとしたら、まずなぜWebサイトから今無料体験授業の申込みが少ないのかを検討する。
その結果、「どんな講師がいるのか掲載されていないため、そもそも無料体験授業を受けようという気にすらなっていないのだろう」と考えたとしよう。
そこから、「講師陣の紹介ムービーを作ることで、興味を惹きつけることができるだろう」という仮説を導き出し、講師陣紹介ムービーを公開する。そういった仮説があれば、ムービーをどのくらいの人が再生し、どのくらいの人がそこから体験授業申込みフォームに遷移したかを測定することで、その仮説を検証できる。
仮説が間違っていれば、講師陣のPRと無料体験授業の申込み率(つまりその塾に対する興味関心といえる)には関係性がないのだろうとわかるので、それをデータとして残しておくことで、後の戦略で同じ失敗はしない。
あなたの会社にとっては当たり前のことであってもターゲットにとっては魅力的に見えることがある。
サービス・商品の提供側は当たり前過ぎでその価値に気づいていないパターンだ。価値というのは誰の前に立つかによって変わるのだ。
そのことを踏まえて自社の提供するものを様々な立場から見てみよう。そして訴求できることをどんどん洗い出していこう。そうやって洗い出した中に最強の訴求コンテンツの原石が眠っているかもしれない。
こういったことは顧客インタビューや顧客観察(店頭での観察や過去の顧客とのやり取りなど)を通して気づくことも多いから、できることならやるとよい。
当たり前のことを強く訴求することで、ターゲットにとって魅力的なWebサイトになることもあるということを覚えておいていただきたい。
Yahoo知恵袋などのQ&Aサイトで検索をかけて、ターゲットがどんなことに悩んでいたり、どんなことに興味関心をもっているのかを調べることもできる。
これは意外と有効活用できる。
例えばWebサイト制作で調べてみると制作会社の選定方法や見積りについてのQが非常に多いことに気づく。この疑問に対して自社なりに回答をすることで、それがそのまま一つの自社コンテンツとなり、Webサイトに掲載できる。そしてそのコンテンツはほぼほぼ必要とされるコンテンツと考えて間違いない。
これらのことをすべての制作会社やクライアントがやっているということはない。
今の時代、Webサイトを持つことは当たり前になった。一方でなんとなく作られたWebサイトは世の中に散見される。
だからこそ、質の高いWeb企画を立て実行することが有効であると同時にそれができなければWebで勝ち残っていくことは難しいだろう。