Webリニューアルだけに関わらず仕事全般そうであるが、背景とその目的は必ず最後まで共有しておかなければならない。あたり前のことであるが、このあたり前のことが意外と難しかったりする。特に関係者が多くなればなるほどその傾向になる。
まず背景と目的がずれることで生じる不都合を例としてあげたい。
以下のような背景と目的があったとする。
しかしこういった背景と目的がうやむやになってしまって、以下のような要件にすり替わることがある。
一見問題ないように思うが、あくまでも企業としての利益率を向上させたいという背景がある。Web集客を増やすために仮にオウンドメディアをつくり、コンテンツ配信することでアクセス数を集め、集客しようと考えているとする。
それ自体はいいのだが、そもそもオウンドメディアを運用するリソースはどこから持ってくるのか、アウトソースするなら費用がかかるし、自社内でやるのであれば人員が必要である。
また、Webからの集客数がアップして提案の場が増えても、仮にWeb集客からの成約率が悪いビジネスモデルなのであればそれが得策とは言えないかもしれない。
Webを改善して検索で上位表示されるようになり、お問合わせは来るようになったがWebからの成約率が悪く、提案する時間が増えただけというケースは実際にある。
もちろん、Webから集客できること自体は強みなのだが、同時にWebの運用には負荷がかかることや、集客した分だけ成約にこぎつけるまでのリソースも場合によっては忘れてはならないということだ。
背景や目的が共有できておらず、本来の重要なことに目がいかなくなることがある。この場合、やたらと時間とお金をかけているのは良いが、売上があがっても利益率改善には程遠いということになり得る。この場合はWeb集客だけに絞ってしまったのがよくない例えである。
しかしそうは言っても、途中で路線が間違っていることに気づくこともあるだろう。
組織的に動いている場合は特に、分かっていても中々それを路線変更できる人は数少ない。強いリーダーシップを発揮する人材がこういうときには重宝される。
例えば話だが、1800円払って映画館に入ったとしよう。目的は2時間楽しい時間を過ごすためだ。しかしその映画が駄作だった。
この場合どうするか?ほとんどの人は映画館で最後まで映画を見る。
しかし、目的を達成するためには映画館を出て他に楽しいことを探すほうが合理的だろう。どの道1800円は戻ってこないが時間は失わずに済むのだから。
背景と目的を皆で共有しておくことで、皆が納得して路線変更も比較的スムーズにできるのではないだろうか。もっとも路線変更しないで済むことを目指すべきではあるが、状況が変わることで路線変更を余儀なくされることもあるから、こういったことも心得ておきたい。
ここまでで背景と目的の共有は非常に重要であることがご理解いただけただろうか。そのためにやっておかなければならないことは、仕様書への背景と目的の明記である。
Webサイトを制作する際、ヒアリングした後、制作会社から企画書や仕様書が出てくると思うが、ここに背景と目的はしっかり明記されているだろうか。
背景や目的は上層部含めしっかりと確認しておきたい。何よりも重要な部分で、今後戦略の是非を判断する際の大きな指標となる。「共有」というと作業的には簡単なことでも企画が進むと様々な妙案が出てきて、「これがいいんじゃないか」「あれがいいんじゃないか」と、手段に振り回されるようなシーンに遭遇するだろう。
その時に、関係者全員が共通認識しておかなければならないのは、背景と目的だ。基本の基本だがよくここがぶれるケースがある。
筆者はあたり前のことがあたり前にできるようになるだけで、仕事における成果は見違えるほどに変わると考えている。「あたり前のことをあたり前に」というのは基本に忠実だということだ。
クライアントと制作会社が、基本をしっかりと抑えたWeb企画・制作をすることができれば成果を出すことができるだろう。