クロスメディアとは複数の媒体を通して顧客にアプローチすることで、訴求機会を最大化しつつ、相乗効果を狙うことができる。
企業の露出は何もWebサイトだけではなく、SNSや紙媒体など複数の媒体が考えられる。これら複数のメディアを単に使って露出機会を増やすだけではなく、それぞれの媒体ならではの特徴を活かし、媒体間のユーザー移動なども考えながら戦略的にクロスメディアを活用するクロスメディア戦略を企業としてはぜひ取り入れていきたい。
冒頭で複数の媒体と書いたが、どのような媒体があるだろうか。細分化するときりがないので、大きくカテゴライズして以下に整理する。
これら複数のメディアで1つの情報が横断的にシェアされることで訴求機会を最大化できる。しかし、単にそれぞれのメディアで訴求するのではなく、あくまでも相乗効果を生み出す掛け算的な発想が必要である。
まずはWeb、紙、放送、でできることの違いについてしっかり認識をもっておこう。
■アクセスの自由度が高い
いつでもどこからでもアクセスできる。スマホの出現によってさらにその機会は広がった。
■アクセス解析によってデータ分析ができる
ターゲットの行動を追うことが容易にできる。行動分析をすることによって課題を解決するためのヒントを得ることができる。
■階層構造によって大量の情報を綺麗に掲載できる
大量の情報もコンパクトにまとめることができる。重量もなければ幅もとらない。情報を整理し適切なレイアウト・構造を構築することで、大量の情報の中であっても必要情報を瞬時に見つけ出すことができる。
■動画で訴求できる
動画が簡単に制作でき、Webサイトに埋め込むことができるようになってから、視覚的情報での訴求性が抜群にあがった。
■更新できる
Webサイトは更新できるので、常に最新の情報をユーザーに届けることができる。
■一覧性がよい
紙面の一覧性の良さはピカイチだろう。Webのように上からスクロールする必要はない。パッと見渡して全体の概要を一瞬でつかむことができる。
■集中して読める
Webのようにバナーやメニューがなく、そのコンテンツに集中させることができる。
■世界観が出しやすい
デザインの自由度が高く、Webで表現できないことを表現できる。また紙質も選ぶことができ、紙面だからこそ出せる世界観がある。
■特別感を演出できる
形も加工も自由だ。よく展示会にいくとつい手に取ってしまいたくなるような美しい特別感のあるパンフレットがおいてある。DMでも開封せずにはいられないようなギフト感のあるものもある。
■会議でシェアしやすい
紙メディアは会議の資料として配布しやすい。上司決裁を得る場面でも担当者の立場からするとWebメディアを見せるのは大変だが、紙メディアは楽に見せることができ有効である。
■認知度が爆発的に広がる
放送規模にもよるが全国区の放送は認知度を爆発的に広げる要因となる。
■信用されやすい
他メディアを通して認知される場合は自社サイト等で認知されるより信用される。それがテレビやラジオとなれば得られる信用はかなり大きい。
それぞれの強みをいかした媒体の使い方をすべきであるが、実際にクロスメディア戦略とはどのように各メディアを連携させるのだろうか。
いくつか例をあげながら説明していきたい。
例えば展示会では紙メディアをたくさん配るだろう。紙面にQRコードをつけておくことで、Webサイトに誘導することができる。とはいってもユーザーからするとQRコードを読み込むという一手間がかかる。ユーザーがその一手間をかける理由はなんだろうか。その理由がない場合は残念ながらQRコードが読み込まれることはないだろう。Webメディアにアクセスすることのメリットが伝わらなければならない。
Webメディアに誘導した後は、紙メディアではできなかったこと、例えば動画訴求を通して信頼を獲得するなど、Webメディアのメリット十分にいかしてターゲットを顧客化していこう。
WebサイトをSEO対策することでWebメディアでまずは集客し、商品・サービスに興味をもってもらった後、資料請求をしてもらうパターンがある。商品の仕様などについては、紙メディアの方がわかりやすいケースがよくある。
また、Webサイトは個人で見る分にはいいが、皆で見たり上司決裁を仰ぐ場合はやはり紙メディアが必要である。
また、ターゲットの行動を考えた時に、どのタイミングで紙があると良いかを考えてみよう。もし資料がすぐに必要なら、資料送付ではなく、その場でダウンロード、印刷できるものがよいだろう。業態によってこの辺りは変わってくる。
テレビで放送されることが決まったら、放送後にアクセスが集中することを考え準備しておく必要がある。せっかく集まってきたアクセスをただ垂れ流しにするのか、この機会に何かプロモーションをして一気にリードを獲得するのか、事前の対応によって命運が別れるだろう。
クロスメディア戦略を立てる上でのポイントは、それぞれのメディアの役割を抑え、単体のメディアではできないことをいかにクロスメディアで実現するかである。
ただ導線をひくのではない。それではユーザーは導線設計に従って動いてくれないだろう。ユーザーが何かアクションする際にはかならず意味があると考えておきべきだ。
つまりメディア間をユーザーが行来するには理由がある。その理由を捉え、いかに興味を湧き立てさせ、ノンストレスでメディア間を移動させることができるかどうかが、クロスメディア戦略の本質である訴求機会の最大化と相乗効果を生み出すポイントだといえよう。