これまでにいくつか工務店のホームページを制作させていただいた。もともと筆者が家づくりにものすごく興味があり、なぜだかインテリアコーディネーターの有資格者でもあるので、工務店のホームページ制作には特別な感情がある。特定の業界に対して特別な感情があると公言するのもどうかと思うが、それにしても特別な感情はある…。
本記事ではそんな筆者が工務店のホームページ制作において重要なポイントを5つリストアップしたのでこれから制作をご検討の方は参考にしていただけたら幸いだ。
工務店は大工を抱えているところと抱えていないところがある。しかしターゲットからみて大工に対するイメージはかなり重要だ。設計は工務店がやっても実際に建てるのは大工であるし、現場確認のとき(あるいはそれよりもっと前)に必ず顔合わせをすることになる。
大工のような職人技を求められるような技術職においては、技術力と同じぐらいどんな人間がやってくれるのかは非常に重要だ。出来上がったものを引き渡す建売ならまだしも、これから「一緒に作り上げていきましょう(しかも一生ものの買い物だ)」というときに、大工の顔が見えないのは不安だ。これはお客様の声として実際にあることだそうだ。
大工を抱えているのであれば当然だが、抱えていなくても外注先や応援依頼先に許可をとって自社ホームページに顔写真等を掲載できるのであれば掲載した方がいいだろう。「設計はします。誰が作るかは契約したあとにわかりますよ。」では信頼と安心を得るのは難しい。
建てた家の写真が際立つように掲載しよう。解像度が高く大きな写真を見せよう。ギャラリーページなどで写真を際立たせて見せたいときは、周囲に余計に目立つような色を入れず、背景は白がよい。できるだけメインの写真の周りは余白をとり、写真を集中してみてもらえるようにしよう。
電柱や電線が邪魔している場合は取り除こう。Photoshopがあれば電線や電柱を簡単に取り除くことができる。ただし、限界はあるので、写真をとる時にできるだけ邪魔が入らないような角度から撮影しよう。
写真の明るさは調整できるが、これにも限界があり無理に明るくすると画質が悪くなるので、日中の写真は晴れているときに太陽光の下で撮り、夜の写真は窓から漏れる光が綺麗なコントラストになるように撮ろう。しかしできることなら、プロカメラマンに写真は依頼することをオススメする。画像加工もしてくれ、かなりクオリティがあがる。
それから重要なことだが、写真撮影する際は予め構図を考えておこう。縦長か横長かはもちろん、どのような縦横比でトリミングされるのか、どこまでが入ってどこからが切れるのか考えた上で撮影をしよう。プロカメラマンに依頼する際にはWeb制作会社とのその辺の構図についてのやり取りが必要だ。
どういう暮らしを提供できるのかを訴求しよう。木の家を得意とするのであれば木の家がどのようなライフスタイルをもたらしてくれるのかを訴求したい。もちろん、見た人が明確にイメージできるぐらいの素晴らしいコンテンツとして作り上げなければ。
まだまだホームページは雑誌ほどの訴求ができていないというのが弊社の所感だ。雑誌でどんな家にしようかと見るのはかなり楽しいが、ホームページでそのワクワク感の演出ができている企業は少ないように思う。物理的な違いによるものも大いにあるが、もっとホームページは雑誌のような「ワクワク感」、「見ていて楽しい!」を創造できるだろう。
弊社としてもその限界に挑んでいきたいものだ。一つヒントになるのがストーリーを感じさせる訴求である。雑誌にはよく実際の家の写真に加えて住んでいる人もそこに写っていることが多い。そして写真の横にこのようなコメントがある。
「料理をしながら子供が遊んでいるリビングが見えるので、大好きな料理も気兼ねなく楽しむことができます。」
具体的な生活シーンを想像させながらその家のコンセプトを物語っている。住宅の設計ノウハウをすべて公開しようというわけではない。3〜5個ぐらいでもいいので「小さな子供がいる人のための住宅設計」「姑と揉めない二世帯住宅設計の極意」「子供が増えても簡単にリフォームができる住宅設計」などライフスタイルに寄り添った形で家づくりのポイントを解説するコンテンツがあると、人は自分のライフスタイルを考えながらワクワクしてくるのではないだろうか。そして期待をいだくようになるのではないだろうか。
工務店ごとに特徴はあるだろう。モダン建築が得意な工務店もあれば、ナチュラルが得意な工務店もある。しかしどの工務店にも安心とエコに関しては共通して求められるのではないだろうか?工務店選びでお客様が不安をいただかないよう、どんなお客様も必ず求める項目は洗い出しておき、訴求しよう。
住宅は一生に一度の大きな買い物である。しかも注文住宅は竣工までに時間がかかるもの。少なくとも人として良い関係が築けない工務店に依頼したいとは思わないだろう。ユーザーは当然できるだけ良い人間関係が築けるところにお願いしたい思っているだろうが、初めて見るホームページからそれを読み取るのは通常至難の技だ。
だからこそ想いを通じて共感してもらうこと、この人に会ってみたいと思わせ、まずは会ってもらうことが重要なのではないだろうか。これは単純に社長メッセージやスタッフ紹介があればいいというものでもない。人の心を動かすようなライティングスキルも必要だ。
工務店が提供するものは一生に一度の買い物である住宅だ。ターゲットはワクワクしながらも不安だろう。工務店のホームページの役割とは、そんなターゲットのワクワクを増幅させながら不安を取り除いていくこと、そしてまずは会ってみたいと思わせることではないだろうか。
細かいノウハウや知識はパンフレットに盛り込んでPDFダウンロードできるようにし、ホームページはワクワクと安心を提供する場と割り切ってつくるのもよいだろう。