Webサイトに訪れたユーザーにあなたの会社が提供している(仮に)50万円の商品・サービスの価値の本質を理解してもらうことは、少しハードルが高いかもしれない。
もちろんだが、Webサイトを訪れたユーザーに「このサービスは本当に素晴らしい!この会社は信頼に値する!サービスの購入を検討しよう!」と思ってもらうことは理想である。ただ商品・サービスの価格が高い場合はことはそう簡単でもない。
価格が高ければ高いほど、ユーザーが商品・サービスの価値と信頼性を理解するまでに時間を要する。そして、競合他社の魅力的なサービスがたくさんある中で、ユーザーは簡単に次々とWebサイトを遷移していってしまうだろう。
商品の価値をわかっていても、高価格帯商品・サービスにはそんなに簡単に手を出さないし、間違いなく購入する相手を選ぶ。あなたの会社のことを知らないユーザーがWebサイトに訪れて、いきなり高価格帯商品・サービスを購入することはよほどのことがない限りないだろう。
このような場合、ユーザーにはまずは商品・サービスだけではなく、あなたの会社の価値を理解してもらい信頼してもらう必要がある。そのためには、購入や利用のハードルが低いサービスを提供することが有効だ。
ご存知の方も多いと思うが、このような商品をフロントエンド商品という。フロントエンド商品は迷っているユーザーやあなたの会社に対する価値の理解度が低いユーザーに対して有効で、まずは体験してもらうことに意味がある。
フロントエンド商品がマーケティング的に有効な理由は、2点ある。
まず1点目は、あなたの会社に対して企業価値や信頼性が特にない(印象がない)人に対しても、購入ハードルが低いので、商品メリットがあれば、実際に商品を購入してもらえること。そして、実際に商品の使用を通して、企業価値を理解し、信頼性を付与させることができること。先述した通り、高価格帯の商品・サービスは商品メリットだけではなく、企業そのものに対する価値観や信頼性をどれだけ抱いているかが重要だ。
2点目は、1点目とも絡んでくるが、このようにユーザーの最初のハードルを下げることによってパイを大きく取れるところにある。そして、できるだけ多くのユーザーをフロントエンド商品で引きつけておき、そこから一番売りたい高価格帯の商品へと誘導していくことができる。このような最終的に売りたい商品のことをバックエンド商品ということもご存知だろう。
つまりフロントエンド商品でパイを大きく取りながらも、あなたの会社の価値を商品・サービスを通じて体験してもらうことで、高価格帯であるバックエンド商品の成約率をあげていくことができるのだ。
当然、フロントエンド商品の質が良ければ成り立たないのだが。
この概念から考えると、フロントエンド商品というのは、無償でもかまわない。パイを大きく取ることと、あなたの会社の価値に触れてもらうことが目的なのだから。
ただ、小額であっても「一度は商品を購入したことがある」という事実を作っておくと、ユーザーが企業にお金を払うことのハードルはさがるだろう。
よくあるフロント商品は以下のようなものがある。
・初回割引
初回だけ信じられないぐらいの格安で提供。美容系でよくこういった広告をみかけることは多い。
・セミナー
2~3,000円のセミナーでノウハウや技術を提供する。セミナー講師に対して良い印象をもった客に「その講師が提供するサービスをもっと受けたい」という欲求が生まれる。
・○○日間無料試用
ネット上での有償ソフトなどのサービスに多く見られる。最初の1ヶ月は無償で2ヶ月目から自動的に有償になるなど。
・試供品の提供
再春館製薬のドモホルンリンクル無料お試しセットなど。また、街中でよく見かける光景であるが、季節に合わせたものを試供品提供することも多い。スーパーの試食コーナー、スターバックスコーヒーの新商品試飲サービスも同じ概念。
・ノウハウ資料などの無料ダウンロード
無料レポートのような形でダウンロードしてもらい、自社の提供している技術やノウハウを知ってもらう手段は最近よくある手段だ。
フリーミアムモデルはITのクラウドサービスで多い。
これはサービスを無償で提供し、ユーザーはいつまでも無償でそのサービスを使うことができる。ただ、かゆいところには手が届かないようなプランになっており、「この機能があれば…」という機能を有償で提供するというモデルだ。
人は欲張りなので、何かを手に入れてしまうとさらに上のものを欲しくなってしまう。そんな人の心理をうまく使ったようなモデルで、無償プランを使っていくうちにあれこれ機能が欲しくなり、有償に移行することを狙っている。
フリーミアムモデルはフロントエンド商品とバックエンド商品の概念とは少し違うが(フリーミアムモデルは同じ商品の中でプランをわける)まずユーザーに体験してもらうという点では同じだ。
フロントエンド商品を作ったら、しっかりとバックエンド商品まで誘導するフローを作っておかなければ意味がない。
あなたの会社のフロントエンド商品とバックエンド商品はどのようなものだろうか?