媒体には紙もあればWebもある。紙媒体はパンフレットや名刺、チラシ等、様々あり、WebはホームページやSNSなど、こちらも様々ある。
媒体ごとにユーザーに与える印象や伝えられることに違いがあり、状況やシーン、ターゲットに応じて媒体を変える必要がある。Webサイトというのは、あくまでも媒体の中の一部であり、Webサイトにできて紙媒体にできないこと、紙媒体にできてWebサイトにできないことがある。
つまり、媒体というのは組み合わせて使うべきものであり、媒体間の連携が必要である。
本記事は、紙媒体とWebサイトの戦略的な連携方法を説明する。
イベントスペースに設置したパンフレット、Web上で配布している無料ダウンロードコンテンツ、これらは、ビジネスモデルの一連の流れの中でどのような役割を担うべきものか明確になっていなければ、効果的な施策になっていない可能性が大きい。
Webと紙を連携する必要があるケースは様々であるが、大別すると、最初に紙媒体で接触したユーザーをWebへ誘導するのか、最初にWebを訪れたユーザーを紙に誘導するのか、この2パターンである。
それぞれ、前者のパターンを、「イベント来場者をパンフレットからWebに誘導する(紙→Web)」、後者のパターンを「Webサイトから資料を請求・ダウンロードしてもらう(Web→紙)」に置き換え、具体的な媒体の連携方法を考える。
展示会などに出展する企業であれば来場者をWebに誘導して、より詳しく自社商品を知ってもらいたいだろう。パンフレットにWebサイトへのQRコードを掲載するなど、割りとオーソドックスな方法はすぐに思い浮かぶし、よくやることだが、これについてもう少し戦略的に考えてみたい。
QRコードを貼り付けて、「続きはWebで!」で本当にユーザーが流れ込んでくるだろうか。人は思ったより全然希望通りに行動してくれないものだ…。
QRコードを読み込んでWebサイトにいくだけのメリットやインセンティブがないとまずユーザーはWebサイトへ遷移しない。かといって、パンフレットの中身を出し惜しみした形で、「続きはWebで!」のようなやり方はおすすめしない。
なぜなら本来はそのパンフレット1枚でユーザーがあなたの会社に期待感を抱いてもらえるだけの情報を与えるべきなので、ここで出し惜しみをしていては本末転倒である。
ではどうすべきかというと、紙媒体とWebサイトの役割やメリットを一度整理して考えてみると答えが見つかりやすい。紙媒体はそのレイアウトの自由度から、視認性に非常に優れている。一方でWebサイトは動画などの動的コンテンツを打ち出すことに非常にすぐれている。
であれば紙媒体で訴求できることは全部訴求してしまって、Webでしか訴求できないことをWebでやってしまう方がよい。(もちろん紙媒体には紙面の都合上掲載スペースに限りがあるがWebにはないので、そういった意味で「続きはWebで!」とするのはよいだろう。)
例えば、テクノロジー系の展示会にいくと最近はドローンの展示・実演が目立つが、展示会場で実演できることにはスペースの都合もあり、限界があるだろう。展示会場での実演に興味をもってくれた人に、もっとすごいドローンの実演動画見られる特設ページの案内をパンフレットに掲載すると見てくれるのではないだろうか。
何を展示しているのかによって、どう訴求していくかは変わってくる。バッグに使えるような革素材を展示会で展示しているとする。Webサイトで訴求するより明らかに展示会で触ってもらったほうがいいに決っているが、ではWebサイトに誘導するインセンティブがないかというとそんなことはない。
例えば、その革素材を使った実際の商品例やその商品の訴求方法までまとめた資料をWebサイトに掲載しておくことで、展示会で興味をもった見込み客がWebサイトに訪れる仕組みをつくることはできそうだ。
紙媒体はWebに比べてデザインの自由度が高い。PDFのデザインにも気を遣うことで、Web上でブログとして発信するものよりも世界観を出すことができるし、より印象的である。そして紙媒体は50ページぐらいの量でもまとめてもっておくことができる。ブログのようにページ間を遷移する煩わしさはない。
Webサイトで興味を惹きつけたら資料請求・ダウンロードによってさらに距離感を縮めよう。いきなりボリュームのある資料を受け取ってもらうのは難しくても、Webサイトで十分に興味を惹きつけたあとなら可能だ。
また、Web上の配信は所有感はないが、ダウンロードコンテンツにした途端、所有感が湧き出てくるものだ。素晴らしいコンテンツをつくり、1冊の本のように大切に保管されたらしめたものだろう。
ちなみに、ダウンロードしてもらう資料に書く内容は出し惜しみ感がないようにしたほうがよい。資料を読んで満足したから成約しない、というケースはあるのだが、プロにお金を払ってまで解決したい悩みをもったユーザーが資料を読んで自分で解決して満足するというケースは少ないだろう。お金を払う意思がある人(それだけ悩みが大きい人で予算もある人)は資料を読んであなたの企業が良いと思ったらお金を払う。無料コンテンツはユーザーがその企業を査定する場だ。出し惜しみは裏目にでる。
また、人は欲深いもので、一つ悩みを解決するともう一段階上に行きたくなるものだ。無料コンテンツで悩みを自分で解決した人がいたとしよう。その人は一段階上の高次の悩みができるだろう。そして、それを解決するためにどうしたらよいかを考えたときに、無料コンテンツで結果を出したあなたの会社が真っ先に頭に出てくる。
資料の請求・ダウンロード方法は様々で、個人情報を提供することなくダウンロードできるものもあれば、メルマガ登録が必須なものなど様々であるが、これはダウンロードした後工程をどう考えるかだ。
とりあえずリストを取っておきたい、ただそれだけでメールアドレスなどの入力を必須にするのは少々疑問がある。リストを取るならそのリストに対してどういうアプローチをするかを考えておかなければならない。
資料を何と引き換えに渡すかは、そのリストに対してどういうアプローチをするかを考えた上で設計した方がよいということであり、これも媒体を活用する上で考えておかなければならない。
メルマガも一種の媒体なので、ここで少し触れておきたいと思う。
メルマガをやるなら資料をダウンロードしたユーザーの悩みに対して有益な情報を発信する必要がある。いきなりセミナーの告知の嵐はさすがにまずいが、そういうメルマガも案外多い。メルマガが来ることを鬱陶しいと思わせては逆効果だ。
そもそもメルマガでやるべきことはユーザーを顧客に昇華させるための教育である。メルマガ登録したユーザーを顧客だと勘違いしてしまってはいけない。メルマガ登録ぐらいではまだまだ信用されていないと考えるべきだ。また、続かないメルマガを送るぐらいなら送らない方がよいし、内容がスカスカのメルマガを送るぐらいならこれまた送らないほうがよい。
以下にWebと紙媒体の特徴をいくつかの視点で切り分けて挙げた。
紙媒体とWebサイトを連携する際に、Webだからこそできることや紙媒体だからこそできることをまとめてみると、各媒体の連携をより有意義なものにできるだろう。
まず紙媒体だが、紙媒体はWebに比べて制約がなく、紙質を変えれば手触りも変わる。Webのようにブラウザやモニター、デバイスごとによって見え方が変わるなどということもない。そして何より視認性が抜群によい。
これはレイアウトの自由度が広いことと、紙はサイズも様々な種類から任意に選べるし、縦に使っても、横に使ってもよい。Webとは表現する上での前提が異なるのだ。
Web媒体はどうかというと、レイアウトなどはかなり制限がある。最近のWebデザインは色々工夫はしているが、それでも視認性という意味では紙媒体には遠くおよばない。その一方で動的な表現は得意としている。アニメーションによる表現、動画の埋め込み、3Dシュミレーターなどがある。
商品訴求に動的な表現が欠かせないものはWebまでの誘導が必須だろう。また、動画は代表インタビューやスタッフインタビューなど、人にフォーカスした使い方もできる。企業にあった使い方をすれば可能性は広がる。
紙媒体は触感に訴えることが出来る。といっても、紙質の話であるが、これは予算があればぜひ取り組みたいところだ。高級感を打ち出している企業が顧客に対して、ペラペラのプリンター用紙に印刷した紙を茶封筒に入れてDMとして送った場合に顧客がどう思うかは目に見えている。
これは実際に某クリニックであった話だ。
逆に、Webは聴覚に訴えることができる。音だけを聞かせるというのはあまりないが、動画の中でどう音を使うかというのは一目したいところだ。オリジナルのテーマソングに合わせた企業紹介動画などは実際にある例だ。
紙は一度印刷してしまうと更新はできないが、Webはいつでも更新できる。
そういった意味でWebにアクティブなユーザー(積極的に情報をとりにくるユーザー)を集めておくことで、プロモーションが効率的に行えるようになる。
紙で情報を受取ることと、Webで情報を受け取ることでは、特別感が全く違う。Webサイトの情報は、基本的には不特定多数の人にばらまかれている情報である、かつ、無料情報が圧倒的に多いこともあって特別感はない。紙は“特別なあなただけに送ったものである”という意思表示にもなるため特別感がある。もちろん、折込チラシなどにはその効果はない。
Webには特別感がないと書いたことと矛盾するようだが、Webでも特別感を付与することができる。それが会員制サイトだ。会員だけしか得ることができない優良な情報を提供する場を設けることで、特別感を付与することができる。
以上、
紙媒体とWebの連携について、あなたの会社ならどういった戦略を取るべきだろうか。