商品を購入し、自分で使ってみた感想を人に話したり、Web上に書き込んだりと、口コミというのはその商品を使った人たちから発生するコミュニケーションというのがこれまでの一般的な概念であっただろう。しかし、ここ数年か10年ぐらいで口コミのあり方は大きく変わったのではないだろうか。購入者ではない人たちが口コミをし、それを見た人たちが影響されるようなそんな仕組みが今はある。それらを助長したのが、インターネットはもちろん、SNSやスマホであろう。
SNSが一部の人達のコミュニケーションネットワークではなく、広い世代に普及し、さらにはSNSを使った情報収集が一般化している中で、人々は企業ではなく親しい個人はもちろん、知らない個人の意見にも重きを置くようになった。SNSによって人々が自由に意見を主張する文化は当たり前になり、個人の発信力が強まったことが大きな要因ではないだろうか。そしてさらにそれを後押ししたのがスマホではないだろうか。スマホで簡単に写真や動画を撮り、その場で手軽に投稿することができる。
例えば道を歩いているときに発見した行列のできるお店を思わず写真にとりSNSに投稿したり、知人が投稿したお店での感動体験を自分がシェアするなど、自分に直接関係のないものを口コミすることは珍しくない。
企業は口コミを戦略的に広めるためにやるべきことが昔より増えたし、逆に言うと口コミをうまく活用することで、一昔前の口コミよりも圧倒的な効果を得られるようになった。
ビジネスの柱を3つあげると、集客と成約と顧客生涯価値の3つである。この3つのすべての要素に口コミは強く関わってくる。ユーザーの購買フローは一昔前と変わってきているため、そこに適用していかなければならない。適応するにあたって口コミは無視することはできないマーケティング要素の1つである。
口コミをうまく活用するためにどのようにしたらよいのだろうか。企業や商材によって異なるのはもちろんだが、何を売るにしても共通して考えておきたいのは、ユーザーの価値観へのフィットであると考えている。例えば調味料であれば、(仮に醤油だとして)醤油そのものよりも、その醤油を使って「この醤油で作った卵かけご飯がめちゃうまい!」という価値に変換してしまった方がユーザーの価値観にフィットしているし、共感も興味も湧きやすく、さらに伝わりやすいだろう。情報をユーザーの価値観にフィットさせることで、ユーザー同士の話題に入れてもらいやすくなるのではないだろうか。こういった、口コミのもととなる話題性あるコンテンツを作ることが現代のマーケティングに必要なことではないだろうか。
口コミというとSNSで多くの人に拡散されるような爆発的なものを想像してしまいがちである。しかし、それは大手やベンチャーにとっては必要かもしれないが、ほとんどの中小企業にとっては不要ではないだろうか。(もちろんあれば良いが狙うものではないと考えている。)戦う場所は小さなフィールド、小さなコミュニティで全く問題ないだろう。限定的かもしれないがそこで良い口コミを勝ち取り、少しずつ大きくしていく発想が必要である。
例えばSNSで何千何万と拡散されるのではなく、自分のフォロワーからシェアしてもらうところから始めるのもよいだろう。特定の地域で口コミを広げていくマーケティングでもよいだろう。勝てるところでしっかり勝つことが重要で、いきなり大きくでるより、小さなフィールドで確実に勝つための口コミ戦略をやっていきたい。